“普通(まとも)”がわからない予備校講師と、“普通”をわかったつもりの教え子が、普通の恋愛とはどんなものかを探求していく『まともじゃないのは君も一緒』。本作を観ると答えに辿り着けるのか、映画好き女子の皆さんと座談会を行いました。「私だったら、あの選択はしない」「私も彼女と同じようにするかも」など、いろいろな意見、解釈が飛び交いました!
『まともじゃないのは君も一緒』
2021年3月19日(金)より全国公開
監督:前田弘二
出演:成田凌/清原果耶/小泉孝太郎/泉里香/山谷花純/倉悠貴
配給:エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
大人になるともうやらない!?予備校生、香住のかわいい言動
Aさん:普段あまり邦画を観る習慣がなく、今回久しぶりに邦画を観たんですけど、主演のお2人の演技がしっくりくるというか、自然に入ってきておもしろかったです。共感するために映画を観ることは普段あまりなくて、ショットが綺麗だとか、こういうカメラワークにしたのかなと考えながら観てしまうタイプなんですけど、切り返しがすごく効果的に使われていて、それが会話のリズムとかも生んでるのかなとか考えながら観られました。それも含めておもしろかったです。
Bさん:私も久々に邦画を観たんですけど、小泉孝太郎が演じる宮本がどんだけ最低なことを言っててもひたすら爽やかで、小泉孝太郎の爽やかさに素直にビックリしました。
一同:ハハハハ。
Bさん:“普通”って言葉を、私達も会話でよく使いますが、「普通って誰が決めたことなんだろう?何をもって普通なんだろう?」って、映画を観ていてわからなくなりました。なので、映画の中でも普通を考えていくうちにわからなくなっていく感じに共感できました。
Cさん:私も同じく久しぶりの邦画でした。しかもヒロインが高校生で、大人になっちゃうと10代の女の子がヒロインの映画ってなかなか自分では選ばないので、今回良い機会をもらったなと思います。予備校生が予備校の先生と仲良くなって、あんなきっかけで突然恋愛感情に芽生えて、最初は「恋愛ってわからない」っていう反応だったのに、「これか!」という風に恋に落ちた音っていうか表情が観ていてすごく楽しかったです。自分の高校時代はあんなじゃなかったなっていうのはあるんですけど、共感できたというか、楽しく最後まで観られました。
マイソン:懐かしいのと、他の人はあんな感じなんだって新鮮味もありましたよね(笑)。Dさんはいかがでしょうか?
Dさん:とても楽しかったです。成田凌さんが演じた大野のほんわりした雰囲気を、ああいう人は結婚するには良いなと希望目線で観て癒されました。主人公2人が両極端だけどそれぞれに純粋で、とても良い映画だなと思いました。
Eさん:懐かしいような気持ちと、大野の性格というか面倒くさいところもくすぐられるというか、こういう人もいるよなと思いながら観てました(笑)。
マイソン:面倒臭いし、問いが難しいし、っていうのがおもしろかったですよね(笑)。では、女子のツボにはまりそうなところを教えてください。
Bさん:私は結構安直なタイプなんですけど、料理屋での美奈子と大野のシーンとか、2人がしばらく一緒に歩くシーンが絶妙に良かったですね!
マイソン:確かにあのシーンは素敵でしたね!
Cさん:香住ちゃん(清原果耶)が恋心を自覚してから作戦のためじゃなくて、仲良くなりたくて模擬デートをしようと「下の名前で呼んで」とか、全然作戦を考えずにカラオケで「はい、歌って」みたいなあの感じが可愛いな〜ってなりましたね。グイグイいけないけど、彼氏彼女っぽいことをしたがってる感じがすごく可愛かったです。
一同:うんうん。
マイソン:皆さんはこれから先、今お話にあったようなことってします(笑)?
一同:(首を横に振る)
マイソン:全員首を横に振りましたね(笑)!とはいえ下の名前で呼んで欲しい人は手を挙げてください。3人。Aさんはそうでもないですか?
Aさん:特には(笑)。認識できれば良いです。
マイソン:ハハハハ。Eさんはどうですか?
Eさん:2人だけのニックネームも良いなって思います(笑)。
マイソン:外では使わないのに、2人だけの時に使うみたいな(笑)。良いですね、距離の近さを感じますよね。では、この映画を観て“普通、まとも”という捉え方に変化はありましたか?
Bさん:自分の考える“普通”についてあんまりよく考えたことはなかったんですけど、意外と「普通はそうはしないよ」とか「普通に皆やってるよ」ってことって大体自分の周りに3、4人いたらそれ言ってるなって思って。自分のなかで言ってる普通って、統計的にはしっかりしてないというか、自分の身近だけで定義付けられた“普通”なのかなって感じがしました。
Cさん:私も、大野みたいにあそこまで「普通って何ですか?」って必死に考えないので、今おっしゃったみたいに自分の周りが関わるところがベースになって、その中で自分で統計を出して「皆やってる=普通」にたぶんなってるんですね。あとは雑誌とかマスコミの情報に洗脳される部分もあると思います。「脱毛なんか皆やってるよ」って、本当にやってるかって聞くと「自分で剃ってるよ」って友達も一定数いるけど、やっぱり「皆やってるよ」って聞くとそんなもんかなって思ったりします。だから私達の“普通”は定量的じゃないですね。
Eさん:定量的っていう単語が新鮮です。あと女子のほうが「皆が言ってる」とかよく言いそうですよね。男性は「皆って誰?誰が言ってるの?」ってなりそうけど、女性って結構“皆”ってくくっちゃう傾向があるのかなと思いました。
Dさん:“普通”って言葉は、皆さんおっしゃっていたように女性のほうが使うような気がしますけど、今はもう“普通”っていうのは人それぞれなので、普通じゃなくても良いのかなと逆に思っちゃいました。
Aさん:私は“普通”という概念自体がわからないので、どちらかというと大野側の人間だと思います。
マイソン:皆と一緒じゃなくてもいいやって感じですか?
Aさん:う〜ん、もちろんそうですし、ニューヨークに留学してたんですけど、愛の形も肌の色もそれぞれだし、服もヘアスタイルも自由だし、普通っていうのがないっていうか、そういう概念自体を脱構築していくことが今後のジェネレーションZの任務なんじゃないかなと考えたりもしています。
マイソン:じゃあこの映画のテーマ自体は、改めて考えるという意味では今に合ってるというか?
Aさん:そうですね、ただちょっとだけ残念だったのが、メインのキャラクター全員が結婚がゴールみたいになっちゃってたところですね。でも最後は良い締め方だったなと思います。
マイソン:確かに結婚ありきというか、あのキャラクターにとってはということなんでしょうけど、言われてみるとそうですね。「普通って何?」って思える要素がいろいろなところに潜んでますね。良い発見になりました!
美奈子の選択はアリ?ナシ?私だったら…
マイソン:では、登場人物の中で1番共感できた人は誰ですか?(キャラクター毎に挙手で確認して)美奈子に共感が3人ということで、Dさんはどういうところに共感しましたか?
Dさん:冷静に考えて、本当にすごく考えて、あの選択をしたんだなと思ったんですよね。
Cさん:恋愛小説だとあの展開とは違うことになって起承転結的にはおもしろくなると思うんですけど、現実ってそんなにおもしろくなくって(笑)。
一同:ハハハハ。
Cさん:結局美奈子は彼を好きかどうかというか、彼を好きになろうと思って結婚しようって考えてるわけじゃないですか。たぶん好きになろうと今までも努力してきたと思うし、仕事の関係で婚約がダメになった時に自分も含めてどういう目で見られるかとか、こっちの道、あっちの道とそれぞれ考えた末にそりゃそっちを選ぶだろうなって、すごく感じました。でも10年後にどうなるかわかりませんけどね。
マイソン:そうですよね(笑)。もっと散々痛い目にあってから気付くみたいな。
Cさん:結婚したら変わるかな?子どもができたら変わるかな?…かな?…かな?…かな?って。
マイソン:その可能性も大ですよね〜。Eさんは美奈子のどういう点に共感しましたか?
Eさん:婚約しててもその人との未来を考えて幸せにやっていけるのかって考えることもやっぱり現実的にあると思うので、しっくりきましたね。
マイソン:確かに、相手がどうかというのに関わらず、皆迷うことはあるんじゃないかというところも含めて共感できたという感じですかね。Aさんは特に誰に共感するでもなく俯瞰して観てた感じですか?
Aさん:そうですね。でも今お話を聞いていて、やっぱり皆さん美奈子さんに感情移入するんだなって思いました。私がもし美奈子さんだったら、周囲と手を組んで相手を貶めて、そうすると父親も巻き添えをくうので、その間に会社を乗っ取って…という感じで、「これが韓国映画だったら?」とか想像を膨らませながら、今お話を聞いてました(笑)。
一同:ハハハハ。
マイソン:なるほど、そうやって他の展開に想像を膨らませる観方でも楽しめますね!Bさんは美奈子の展開についてどう感じましたか?
Bさん:リアルに考えたら、私だったら別れるんですけど、あの後にあの選択をするってすごいなって思いました。
Aさん:皆さんやっぱり会社を乗っ取るしかないですよ。自分が勝ったほうが良いですよ、全員倒して。
Cさん:「お前みたいな若造が!」とか言われながら(笑)。
一同:ハハハハ。
マイソン:確かに(笑)。恋愛ばかりじゃなくて、女子として強く生きるというパターンもありですもんね。では次の話題で、周囲に大野や香住みたいな人っていますか?
Cさん:私は周囲にはあまり思いつかないんですけど、香住が友達皆が同じ物を飲んでいるなか1人ブラックコーヒーを飲んでいるのは、自分に当てはまるかなと思いながら観てました(笑)。
マイソン:わかります。私もあのタイプです(笑)。
Aさん:私の周りにはいるかな…?でも、小泉孝太郎が演じた宮本みたいな人は世の中にたくさんいるよなって、彼は現代らしい人物像だなと思いました。
Bさん:私は旦那さんが理系のタイプで、大野まではいかないんですけど。私が感情論で話すタイプなので根拠のないことばっかり喋っちゃうので、それに対して揚げ足を取られまくるんですね。旦那さんのそういうところは何となく大野に似てるなって思いました。結構痛いところを突いてくるんで。
マイソン:そんな時は応戦するんですか?
Bさん:ちょっと反論しますけど、結局負けてしまうので(笑)。うちの旦那さんは「黙って」と言って黙る人じゃないので、香住が「黙って」と言って、大野が黙るみたいにはならないです(笑)。
Eさん:私も身近で考えると、家族の中で男性陣に痛いところを突かれるっていうのがあって、私の場合は「いいじゃん」って括っちゃうんですよ(笑)。「いいの!」って言って、呆れられるので、さっきお話を聞いていて似てるなって思いました。
マイソン:じゃあ理論で攻めてきても理論で返さずに(笑)。
Eさん:返せないんで、「いいの!いいじゃん!私はこれでいくの」って。
マイソン:シャットアウトですね。それも1つの手かもしれないですね!じゃあ「まともな恋愛ってどんな恋愛?」と聞かれたら、皆さんはなんと答えますか?
Cさん:自分が納得できる選択かな。結局、まともとか普通って自分がこうだと思って作り上げているものなので、その自分が私は普通だと思っているし、あるいは普通じゃない私を納得できてこの選択は私らしいとかって思えたら、それがまともな恋愛かな。でも自分ではまともだと思っていても、人によくよく聞いてみたら、例えば「それはDV彼氏だよ」「お金を持っていく男はダメだよ」みたいなことになるパターンもあると思うので、後から他の“まとも”を知って後悔するパターンはあるかもしれないですね。
Bさん:まともかどうかって結局他人からの評価で、2人の世界ができていればそれが2人にとってはまともになると思うので、定員2名の恋愛がまともな恋愛なんじゃないかと思います。
Aさん:たぶんお互いが対等な人間として認め合って、搾取し合うことをせずリスペクトし合える関係が良いんじゃないかな。
Eさん:私は自分が楽しければ、居心地がよければ、まともな恋愛をしているって思えるんじゃないかと思います。
Dさん:2人がよければ良いかなと思いますし、あとは飾らずにいられるようになるのが良いのかなと。
マイソン:どのご意見も納得です。大野や香住を見ていてヒントになる部分もあれば、美奈子のように他のしがらみが強い人は、複雑になっちゃうのかもしれないなとお話を聞いていて感じました。では、最後にこの映画はどんな人にオススメですか?またどんなシチュエーションで観るのが良いでしょうか?
Dさん:女性同士でもカップルでも1人でも良いですし、若い子でも年配の人達でも楽しめると思うので、私はいっぱい皆さんにオススメしたいと思います。すごく良かったです。
Eさん:意外と1人で気楽に観るのもオススメだし、結構懐かしい感じもしたので、いろいろな世代に観てもらいたいです。
Aさん:身近にいらっしゃる宮本(小泉孝太郎)みたいな方を連れて、日頃の行いを反省させるきっかけに観てもらうのが良いんじゃないかなと思います(笑)。でも、それで気付かないのがあのタイプの人なので、それがまたおもしろいと思いました。
Bさん:普通って誰にでも刺さるテーマなのでどの年代が観ても良いとは思うんですけど、例えば高校生がポスターを見てすごくラブストーリー要素が強いと思って観るとギャップを感じる人もいるかもしれないと思いました。だから逆に社会人になって出会いがなくなってきた人で、今はアプリで出会うってことも出てきたなかで、「普通の恋愛って何だろう?」って考え直す年代の人達には刺さるんじゃないかなと思います。
Cさん:ヒロインが高校生なんですけど、私も大人が観るほうが楽しめるのかなと思いました。
マイソン:それはいろいろな経験を積んだ上で観るほうがリアルに恋愛を振り返りながら考えられておもしろいという感じですか?
Cさん:そうですね。
マイソン:なるほど。確かに大人になると周りの人の経験談とかも豊富に聞いてるだろうし、観方が深くなりそうですよね。今日お話を聞いて、いろいろな解釈、観方ができるんだなと改めて思いました。皆さん、ありがとうございました!
ネタバレになるので割愛しましたが、他にも具体的なシーンをもとにそれぞれの捉え方、自分だったらどうするかと話し、女子トークに華が咲きました。観る方の年代によっても、反応がいろいろ出てくるでしょうし、男性の意見も聞いてみたくなる作品です。“普通(まとも)”の概念について新しい視点もでき、「これでいいじゃん!」と元気をもらえるので、頭でっかちになっている方もぜひご覧ください!
『まともじゃないのは君も一緒』
2021年3月19日(金)より全国公開
配給:エイベックス・ピクチャーズ
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REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
普通の結婚を夢見る、数学一筋で〈ミュニケーション能力ゼロ〉の大野に恋愛指南をすることになった、知識ばかりで〈恋愛経験ゼロ〉の香住。普通の恋愛の練習と称して、自分の恋敵に大野をアプローチさせることから、自体は思わぬ方向へ…。
©2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会
TEXT by Myson
2021.3.9 event
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