直木賞作家の井上荒野が、父で作家の井上光晴と母、そして作家で僧侶の瀬戸内寂聴をモデルに男女3人の特別な関係を描いた小説を映画化した本作。ちなみに、登場キャラクターの名前は実名とは違うものとなっています。主人公は作家の長内みはる(寺島しのぶ)。みはるは、ある講演旅行で同業の白木篤郎(豊川悦司)と出会い、2人はそれぞれに妻子やパートナーがありながら男女の関係となります。篤郎の妻である笙子(広末涼子)は、2人の関係を黙認して夫婦生活を続けます。
正直、篤郎の女性関係のだらしなさはすごく物申したくなります。だけど、笙子が怒りを露わにすることなく、夫を見守り、サポートする姿には驚きます。一方、みはるもどこかで笙子のことを意識しつつ、静かに篤郎と不倫関係を続けていて、そんな2人の女性の対比も見どころです。みはるを演じた寺島しのぶをはじめ、豊川悦司、広末涼子らの演技力の高さは言うまでもなく、3人の化学反応があってこそ本作が完成していると感じます。
晩年の瀬戸内寂聴の姿しか知らない人にとっては特に衝撃が大きい作品だと思います。でも、彼女が僧侶になったルーツを知ることで、彼女の人生や執筆作品にもより興味を持てるのではないでしょうか。
複雑な不倫関係が描かれた作品なので、できれば1人か友達同士で観ることをオススメします。みはる、篤郎、笙子の関係は、単なる不倫の三角関係ではなく、どこか特別な関係のように見えます。とはいえ、不倫は決して良いことではないので、反面教師として観て、同じ境遇にはならないように気をつけてください。
R-15+なので15歳以上になってからご覧ください。ティーンの場合も瀬戸内寂聴をモデルにした物語という点だけで観てしまうと刺激が強いと思うので、不倫関係が描かれているということくらいは頭に入れて観てください。本作を観て瀬戸内寂聴についてもっと知りたくなったら彼女の関連書籍などを読むのも良さそうです。
『あちらにいる鬼』
2022年11月11日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
©2022「あちらにいる鬼」製作委員会
TEXT by Shamy