本作は、1995年7月のほんの数日間のうちに約8000人ものボシュニャク人(イスラム教徒)が殺害された惨劇の真実に迫った衝撃作。10代の時にボスニア紛争を生き抜き、『サラエボの花』『サラエボ、希望の街角』などの作品でボスニアの紛争の傷跡を描き続けているヤスミラ・ジュバニッチが監督を務めています。本作では綿密なリサーチに基づきジェノサイド(=集団虐殺)について描いています。
物語の主人公は国連通訳のアイダで、緊迫した状況下で彼女が仕事をしつつも夫と息子を必死に守ろうと奔走する姿に胸を打たれます。アイダ役を演じたヤスナ・ジュリチッチの表情にもとても惹きつけられるので、ぜひ注目してみてください。
物語は主人公を中心に進みますが、多くの避難民が国連施設に集まり保護しきれない状況や、国連施設に入れたからといって必ず安全が約束されるわけではないという状況も背景として描かれていて、悲惨な実態が伝わってきます。また、こうした集団虐殺にまつわる物語を描きながらも直接的な描写を避けて上手くその恐ろしさを伝えている点も秀逸で監督の手腕を感じます。わずか26年ほど前にこんな現実があったと思うと本当に恐ろしいですが、同じことを繰り返さないためにもより多くの人に観て欲しい作品です。
デートで観る場合は、相手にどんな内容の作品か事前に説明することをオススメします。恋愛要素はありませんが、アイダが家族を想う気持ちはどんな人でも共感できる部分があり、彼女を通してパートナーや家族を大切に思う気持ちも再確認できると思います。
紛争や集団虐殺がテーマの作品なので、キッズは中学生くらいになってから観たほうが物語をより理解できると思います。ティーンの場合はアイダの息子達と同世代にあたるので、彼らの心情にも共感できるのではないでしょうか。また、本作を通して紛争を知ることで、こういったことが起こらない未来を皆さんに築いていって欲しいと思います。
『アイダよ、何処へ?』
2021年9月17日より全国順次公開
PG-12
アルバトロス・フィルム
公式サイト
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TEXT by Shamy