ナイキ(NIKE)の“エア ジョーダン(Air Jordan)”誕生秘話。いくつかの逸話は耳にしたことがあるかもしれませんが、マニア以外の方は知っているようで知らないであろう裏話が描かれています。物語の舞台は1980年代、主人公は、ナイキでバスケットボール部門を担当するソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)です。当時のバスケットボールシューズのシェアは1位コンバース、2位アディダスで、ナイキは3位。各社が自社の商品を履いてくれるスター選手を獲得するのに必死な状況で、ナイキはバスケットボール部門閉鎖の危機に直面していました。だから予算も少なく、ソニーはクビ寸前。そんななか、ソニーはまだ新人だったマイケル・ジョーダンの類稀な才能に目を付けます。でも、同じくコンバースやアディダスもマイケル・ジョーダンとの契約獲得を狙っており、予算のないナイキは1番不利な状況。それなのになぜナイキはマイケル・ジョーダンとの契約を勝ち取れたのか、本作ではその経緯が綴られています。
前代未聞の無謀な賭けに出るソニーに振り回されながらも大きな決断をしたのはナイキ創設者でCEOのフィル・ナイト(ベン・アフレック)。交渉の立役者として貢献した創設者の1人ハワード・ホワイト(クリス・タッカー)、ソニーと一緒に戦略を練ったロブ・シュトラッサー(ジェイソン・ベイドマン)、交渉時の切り札としてマイケル・ジョーダンという人物を“エア ジョーダン”というシューズに投影してデザインで表現したピーター・ムーア(マシュー・マー)、彼等個々の力とチームワークが奇跡を生んだ要因となっています。ちなみに、この“エア ジョーダン1”や“ジャンプマン”のロゴを生み出したピーター・ムーアさんご本人は2022年に78歳で逝去されたようです。劇中ではとてもチャーミングなキャラクターとして登場しているので、余計に寂しさを感じますが、こうして映画という形で、裏方で活躍した人物達も伝説に刻まれたのは大変感慨深いものがあります。
ソニー達のチームワークと彼等のユニークな思考、大きな賭けに出た度胸、すべてが重なって奇跡を生んだわけですが、もう1人の立役者はマイケルの母デロリス・ジョーダン(ヴィオラ・デイビス)です。このお母さんの交渉術が見事で、息子の価値を最大限に活かし、それを世に知らしめ、さらにスポーツ選手全体の地位を向上させるに至る条件を出す、勇敢で大胆な姿勢に鳥肌が立ちます。それぞれが妥協せずに自分達のベストを出した結果が、奇跡に結びついたのだと感じるストーリーで、本当にドラマチックです。スポーツ選手にもビジネスマンにも世のお母さんにも希望をもたらしてくれる本作は、老若男女問わず必見です。


ロマンチックなムードにはなりませんが、働く活力、好きなことに打ち込む情熱をさらに盛り立ててくれるストーリーで、観た後はやる気がみなぎって、テンションが上がるはず(笑)。初デートでも安心して観られるので、お互いの仕事や夢などを語るきっかけに観るのも良いですよ。仕事人間が観ると拍車がかかるかもしれませんが、なぜそんなにも仕事に没頭するのか、お互いの理解を深めるためにじっくり話すきっかけにするのも良さそうです。


とても夢のある話なので、キッズやティーンの皆さんにもぜひ観て欲しいです。スポーツ選手に対してだけでなく、会社で働くことにも興味が湧くのではないでしょうか。こんな奇跡はなかなか簡単には起こせませんが、仕事のやり甲斐ってどんなところにあるのかと客観視できる要素が多々あります。進路を考え出した皆さんは特に社会見学がてら観てみてください。

『AIR/エア』
2023年4月7日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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TEXT by Myson
