『半沢直樹』など映像化作品としても数々のヒット作を生み出してきた池井戸潤による同名小説を原作として、竹内涼真、横浜流星がW主演を務めた本作は、金融の世界を舞台にしています。同じ名前で、生い立ちが全く異なる2人の青年が、同じメガバンクに入行し、それぞれに与えられた運命に立ち向かう物語です。
キャラクター達は、大まかにお金を貸す側、借りる側という立場に分かれています。借りる側には零細企業もいれば、大企業もいて、窮地に立たされる状況がさまざまである点も見どころの1つとなっています。会社を経営している方は、他人事とは思えないストーリーといえるでしょう。どうしても、お金を貸す側=銀行が強い立場に見える構造ですが、銀行員にも辛さがあります。その2つの立場をアキラとあきらのキャラクターで見事に表現しています。
個人的に本作を観たタイミングとしても、むちゃくちゃ胸に刺さりました。本作はお金の貸し借りの背景にあるドラマを描いていますが、本質的なテーマは、仕事を通して人間の生き方を問うことにあります。やり甲斐を感じて始めた仕事でも、苦難にぶち当たりまくるとくじけそうになり、何のために働いているのかと心が迷子になることは誰でも1度は経験すると思います。立場や状況は本作のキャラクターとは違っても、初心に返るきっかけをもらえるストーリーとなっています。竹内涼真と横浜流星も役にピッタリで、エンタテインメントとしても楽しめます。仕事が大好きな方も、仕事への情熱を失いかけている方も、心の栄養剤として観てみてください。
原作を読んでいない方なら、竹内涼真と横浜流星が出演しているので、ちょっとくらいラブストーリーの要素があるのかなと期待しているかもしれませんが、本作は100%お仕事映画です。だからこそカップルで観ても気まずくなるようなシーンはなく、初デートや交際ホヤホヤでも観やすいでしょう。ただ、どうしても鑑賞中は仕事のことで頭がいっぱいになるはずなので、ロマンチックなムードにはなりにくいと思います。でも、敢えてお互いの仕事の話をしたい時には会話のきっかけにできますよ。
金融のお話なので、キッズにはまだ少し難しいかもしれません。でもお金の勉強はとても大切です。企業がお金を借りるにはどんなことを審査されるのか、一見儲かっていそうに見える会社が赤字だらけなのになぜ存続できるのかなど、社会勉強として観るととても有意義です。事前に少しお金の勉強をしてから本作を観るか、本作を観てからわからないところを大人に教えてもらうなどすると良いでしょう。
『アキラとあきら』
2022年8月26日より全国公開
東宝
公式サイト
© 2022「アキラとあきら」製作委員会
TEXT by Myson