オリジナルの公開当時1人で映画館で観て、強烈な内容だったので今まで忘れることはありませんでした。当時は、とあるシーンが辛過ぎて観ていられなくなり、しかもそのシーンがとても長くて目を伏せずにはいられませんでした。でも今度は音や声だけ聞いていても辛くなり、映画鑑賞で初めて耳を塞いだ経験をした映画です。ただ、そんな強烈な体験をした映画ということで、そこからギャスパー・ノエ監督作にすごく興味が湧きハマりました。絶対に現実では体験したくないことですが、映画だからこそ観て、人間を知ることができるところが魅力に思えるからです。
そして、トーキョー女子映画部サイトで“デート向き映画判定”というコーナーを作ったのも、実はオリジナル版を観た時の経験がベースになっています。モニカ・ベルッチが写ったポスタービジュアルがとてもおしゃれだからまさかそんな映画だと知らずに映画館に来た方も多かったのか、カップルも多く来ていて、例のシーンで続々と退出していく人がいたのもすごく記憶に残っています。そんな体験から、何でもかんでもデートムービーではないのだなと思い、デートに向いているか否かという視点を入れてみたというのが、デート向き映画判定が生まれた経緯です。
自分にとってもそんないろいろな思い出がある作品ということで、新たな編集で再構成された今作も観ないわけにはいきません。結局どうだったかというと、強烈さは健在ですが、時間軸を逆にすることでまた新たな見え方がするのだなと実感しました。自分に少し免疫が付いたのか、今回は目も耳も塞がずに耐えましたが、やっぱり辛い。そして、今回はキャラクター達のセリフなどを吟味する余裕が少し持てたので、この作品の意地悪さを余計に痛感しました。言葉の意味1つとっても状況が変わればこんなにも変わるという驚きと皮肉がたくさん散りばめられています。
でも、当時は実生活で夫婦だったモニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの共演がもう一度劇場で観られるのは嬉しいところです。2人ともとても美しくて、だからこそこのストーリーはとても切ないんです。
両バージョンを観て、人間の怖さと人生の脆さを一層噛みしめた作品です。映画好きな皆さんにはぜひ1度観てみて欲しいですが、心身共に健康な時に観てください。
これはデートで観てはいけません(苦笑)!観て聞いて辛いシーンがあるという点はもちろん、人間の本性が見えてしまうので、食い入るように観てデートそっちのけになると思います。また、問題を起こす人物そのものではなくても、ある事件をきっかけに恋人、元恋人の本性が露わになるので、ちょっと人間不信になるかもしれません(苦笑)。というわけで1人で観るか、1人で観る勇気がないという方は、仲の良い友達と観ることをオススメします。
R-18なのでほとんどの皆さんはまだ観られませんが、18歳になって早速観るというのにも結構勇気がいる作品です。いろいろな意味でものすごく怖くて辛い内容です。ある意味ホラーよりも怖いと言えると思います。でも、人間の裏の一面が見えるという意味では見応えがあります。なので、大人になっていろいろな映画を観て免疫が付いてからチャレンジすると良いでしょう。
『アレックス STRAIGHT CUT』
2021年10月29日より全国順次公開
R-18+
太秦
公式サイト
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Photographer : EMILY DE LA HOSSERAY
TEXT by Myson
- イイ俳優セレクション/ヴァンサン・カッセル
- イイ俳優セレクション/モニカ・ベルッチ(後日UP)