良い意味で不気味であり、何だか怖い雰囲気に引き込まれます。序盤はキャラクター同士の不可解なセリフややり取りが引っかかり、何が起きているのかを想像するおもしろさがあります。そして徐々に、佐上という奇妙なことを訴える男性が出てきたり、身体は思春期くらいに見えるのに言葉が拙く野生的な少女が出てきたりと、不可解な要素が増えていきます。後半に差し掛かるところで真相が明かされ、後半は工場のある町の人々がどう生きるかという選択がドラマチックに描かれています。
本作はアニメーションだからこそ表現できる世界観、キャラクター設定が印象的です。一見複雑なストーリーではありつつ、観る側のヒントになるセリフがあるので解釈もしやすいでしょう。いつの時代も10代の若者達が抱える普遍的な感情が描かれていて彼等に向けた応援メッセージにも感じられると同時に、大人への警告にも受け取れます。苦しみを知ることで愛と生きる意味に気付く若者達の姿にキュンとしたら、明日から少し違った気持ちで日々を大切に過ごせるかもしれません。
ロマンチックな要素も物語の鍵となっていながら、描かれるのは10代の恋愛なので、気まずくなるようなシーンはありません。ただ、好きでもないのに相手に気を持たせている状態の方は、自分が複雑な気持ちになるかもしれません。内容的に本心から好きな人と観ると、心の距離が一層近づきそうです。友達以上恋人未満で、普段なかなか素直に気持ちを伝えられない関係の2人に特にオススメです。
10代の少年少女が主人公なので、学校や放課後、家庭での出来事など、皆さんにとって身近に感じる内容だと思います。また、自分や友達に気になる子ができたり、恋愛関係も描かれていて、今恋愛中、片思い中の方は余計に等身大で感情移入できるでしょう。
10代のうちは自由に気楽に過ごせるのが特権でありつつ、皆知らない間に大人になります。気付いたら大切なことを忘れていた、なんてことになる前に知っておいて欲しいことが本作には描かれています。
『アリスとテレスのまぼろし工場』
2023年9月15日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画、MAPPA
公式サイト
© 新見伏製鐵保存会
TEXT by Myson
本ページの情報は2023年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。