REVIEW

雨の中の慾情【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『雨の中の慾情』成田凌/中村映里子/森田剛

REVIEW

つげ義春「雨の中の慾情」を原作とし、片山慎三が監督、脚本を務めて撮った本作は、とても不思議な世界観が印象的な作品です。冒頭は、タイトルにある『雨の中の慾情』という言葉そのものを表すようなシーンから始まります。そして、徐々に舞台となる国や時代背景が見えてきます。そのままストーリーが展開していくのかと思いきや、ある時点で「???」となる描写が出てきます。

映画『雨の中の慾情』成田凌/森田剛

この大きな展開をもたらす描写によって、主人公だけではなく、観ているこちらも自分は今どこにいるのだろうという感覚に引き込まれます。私なりの解釈に過ぎませんが、前半は主人公である漫画家、義男(成田凌)の慾情のストーリー、後半は義男が今どういう状態にあるのかを明かすストーリーとなっています。

映画『雨の中の慾情』成田凌/中村映里子/竹中直人

本作は、日本と台湾の合作で、台湾映画独特の質感と、実力派日本人キャストが作り出す世界観が見事に融合されています。慾情をテーマにしているため必然的に描かれるヌードを含めた性描写は、美しさと艶めかしさが印象的です。成田凌、中村映里子らが好演しているのと同時に、森田剛が味のある演技を見せています。年を重ねて俳優としてさらに脂がのってきた印象です。

ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

映画『雨の中の慾情』成田凌

“雨の中”は主人公が置かれている状況の比喩と捉えました。義男はある理由から夢の中を彷徨っているような状態にあり、その状況を雨の中と捉えることもできそうです。また、ストーリーの中で描かれる慾情は彼の生命力の原動となっているように思えます。こうした義男の慾情には、フロイトが提唱したリビドー(=「①欲望、②性的エネルギー」国語辞典 改訂新版 旺文社)に通じるものを感じます。

映画『雨の中の慾情』成田凌/中村映里子

と、ここまでは自分なりの解釈をしてみたものの、一度観ただけでは咀嚼しきれないものがあります。逆に咀嚼しきる必要はなく、感覚で楽しむべき世界観なのかもしれません。とはいえ、原作者の作品を読み込み研究している方などがいたら、解釈を聞いてみたくなるストーリーです。

デート向き映画判定

映画『雨の中の慾情』成田凌/中村映里子

性描写が多いため、デートで観るのは気まずいように思います。ただ、観た後に他者と感想や解釈を話したくなる作品です。そして、本作のストーリーから、カップルだからこそ果たせる役割があると気づかされるかもしれません。普段からどんな映画でも一緒に観ているカップルなら、デートで観るのもありでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『雨の中の慾情』成田凌/中村映里子/森田剛

15歳以上の方は観られます。ティーンの皆さんが観ると、どういう感想が出てくるのか聞いてみたい内容です。頭で考えずに感覚で観るのもアリだと思います。インパクトのある性描写が複数あるので、そこにフォーカスしてしまう可能性はなきにしもあらずとはいえ、根底のテーマは“生きる”ということだと思います。主人公が置かれた状況に自分も身を置いて観てみると、何かしら伝わってくるものがあるでしょう。

映画『雨の中の慾情』成田凌/中村映里子/森田剛

『雨の中の慾情』
2024年11月29日より全国公開
R-15+
カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2024 「雨の中の慾情」製作委員会

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP