本作は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)や『ゾンビ』(1978)などで知られるジョージ・A・ロメロ監督が1973年に手掛けた未発表の映画で、彼がお亡くなりになった2017年に本作の存在が明らかになりました。そしてこの度、4Kレストアが行われ、日本初上陸となります。『アミューズメント・パーク』というタイトルでテーマは老後。ホラーの巨匠ジョージ・A・ロメロ監督はこれをどんな風に描いたのかというと、ホラーではないけれど恐ろしい物語になっています。ある意味現実を描いているだけにホラーよりも怖い!53分と短いですが、内容が詰まっていて、最初に出てくる伏線がラストに効いて、ズシ〜っと響きます。
1973年の作品とはいえ、本作を観ると社会は当時からほとんど変わっていないことがわかります。私達が生きる社会をアミューズメント・パークに当てはめて比喩的に描いており、その中で高齢者達がどんな扱いを受けているのかという実態や、社会のそういった扱いによって高齢者達がどんどん住みづらい状況に陥っていき絶望的な状況になっていく様子を見せつけられる内容になっています。
劇中でも“皆が辿る道”ということを謳っていますが、だからこそ他人事では観られず未来に恐怖を覚えるし、自分達が日常で無意識に高齢者を冷遇しているのかもしれないと客観視させられてハッとします。1973年に手掛けた作品ということは、ロメロ監督が33歳頃に手掛けたことになりますが、まだ若かったロメロ監督がこういったテーマに目を向けていたというところにも洞察の深さを感じます。そしてそれを映画という手段を使って表現したというところで、映画の力とその力を発揮させる手腕を持ったロメロ監督の偉大さを改めて認識させられます。映画好きにはもちろん、学校や職場など教育映画としても広く観てもらいたい作品です。
ロマンチックな要素は全くありませんが、カップルとしてシミュレーションできるシーンも出てきます。長く連れ添いたいと思っている相手だったら、一緒に観てどんな将来を思い描いているか話し合うきっかけにできそうです。ジョージ・A・ロメロと聞くとホラーかなと思ってしまう方もいらっしゃると思いますが、本作は内容が恐ろしいとはいえ、ホラーではなく社会風刺映画なので、社会問題に関心が高い方を誘うと興味を示してくれそうです。
皆さんの世代はまだジョージ・A・ロメロ監督作を観たことがない方も多いでしょう。だからこそ本作から観てみると、ロメロ監督のホラー作品も単純に怖い映画を観るというスタンスではなく、一歩進んだ観方ができるのではないでしょうか。ホラー映画は苦手という方も多いですが、実は深い内容のものも多いので、観ず嫌いで終わらずにぜひ観てみてください。本作はホラーではないので、そういった意味でもホラーの巨匠の作品への入口としてオススメです。
『アミューズメント・パーク』
2021年10月15日より全国順次公開
ビーズインターナショナル
公式サイト
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TEXT by Myson