前半は秋好寿乃(杉咲花)に何が起きたんだろうと引き込まれ、後半は田端楓(吉沢亮)に何が起きたんだろうとさらに引き込まれ、全体的にはサスペンスですが、その背景に若者の葛藤が描かれていて、彼らが持つ光と影の部分にそれぞれ共感できます。ある言葉が示す意味が言葉通りなのか、比喩なのかというところで、物語の見え方が全然違っていて、真相が明らかにされていくなかで、田端楓の心の闇の深さが浮き彫りになっていきます。本作には“人間同士の距離”が一つのテーマになっていますが、傷付くのを恐れて人と距離を置いたほうが良いのかどうか、田端楓の目線で考えることができます。グッチャグチャになった後、彼らは何を得るのか、ぜひ皆さんご自身の目で確かめてください。
ラブストーリーというよりも、友情、人間関係を描いたストーリーで、ロマンチックになるムードの映画ではありません。だからこそ、どんな相手とのデートでも観やすいという部分はあり、普遍的なテーマなので、老若男女共感できます。ただ、友達以上恋人未満の男女カップルだと、主人公2人のあれこれをどう受けとめるかによって、変に意識してしまう可能性だけ一応お伝えしておきましょう(笑)。
秋好が主張する「世界を変える」という思いは、壮大過ぎると皆にあまり理解されず、「なりたい自分になる」というのも言葉で表すよりずっと難しく、そういった価値観の秋好は浮いた存在になってしまいます。タイトルにある“青い”“痛い”は、最初周囲が秋好をそんな風に見ていることを表す言葉のように思えますが、ストーリーを経る毎に本当は彼女をそういう目で見ている側こそ“青くて痛い”のかも知れないと気付かされます。人と違うことに不安を持つ人もいるかも知れませんが、その上で自分はどんな選択をしたいか、本作を観て考えてみてください。
『青くて痛くて脆い』
2020年8月28日より全国公開
東宝
公式サイト
©2020 映画「青くて痛くて脆い」製作委員会
TEXT by Myson