日本でもアオラレ運転が問題視されていますが、他の国でも同じなんですね。原題は“UNHINGED”で、「精神的に不安定な」という意味ですが、アオラレ運転の背景にもっと根深い問題があることを示唆していて、それは個人の問題だけでなく、社会の問題でもあると思えて、一筋縄ではいかないなと感じます。ほんのちょっとしたきっかけで悪い相手の感情に火を付けてしまうのですが、煽られる側にも軽率な部分があります。ただ、この両者とも人生で行き詰まっているという共通点があり、日常的に穏やかな気持ちではいられないからこそ、こうなってしまうのかもしれません。“UNHINGED”は、両者のことを指しているとも捉えられ、正常な精神状態なら感情に流されずに冷静な判断をするところを、「なぜそこでそういう態度を?」という展開になるのは、両者が精神的に不安定だからだと考えられます。
正直なところ、煽られる側にも完全に共感することはできませんが、アオラレ運転は誰にでも起こる可能性があるので、他人事としては観られません。そして何といってもラッセル・クロウが演じるトムがクレイジー過ぎて、「もしこんな人に煽られたら」と思うと、まともに話ができなくなっている相手を前に何もできない無力感を味わえます。
社会問題を意識させられつつも、エンタテインメントとしてもかなり見応えがある本作。どういう視点で観ても、「安全運転が大事」「イライラを人にぶつけて良いことはない」「人生がうまくいかないからって、他人のせいにしない」といったいろいろな教訓を得られます。
パートナーが血気盛んで運転中は特に攻撃的になるタイプ、または今何もかもがうまくいかずにむしゃくしゃしている方やパートナーがそういう状態の方も、ぜひ本作を一緒に観て、反面教師にしてください。辛い状況に立った人間がどういいう精神状態になるのか冷静に客観視できるので、ちょっと頭を冷やすことができるかもしれません。
「マジか!」「そこまでやるか!」というシーンがふんだんに出てきて、ラッセル・クロウ演じる男がとても怖いですが、常軌を逸した大人達の姿から学べることもいろいろあると思うので、興味があれば観てみてください。ティーンの皆さんはもうすぐ車の免許を取って、自分で運転できるようになる方もいると思いますが、本作を観て、運転中にイラッとしたら本作を思い出して、安全運転してください。
『アオラレ』
2021年5月28日より全国公開
PG-12
KADOKAWA
公式サイト
©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
TEXT by Myson