本作は、JXTGグループ、日立製作所、日産自動車など春光グループの源流である日立鉱山(現・JX金属)におけるCSRの原点となった物語を映画化。国の発展のために、国民が犠牲になるという皮肉な現実はいつの時代もあったのだと知ることができると同時に、犠牲になって終わるのではなく、地元の人達自らの強さで問題を解決していった成功例として観ることができます。結局、国に報いる国民に対して、国は何もしないどころか害を及ぼしていて、解決するのも、国民自身。国は政治家によって守られているのではなく、国民一人ひとりの強さこそが国を守り、発展させているのだと実感できます。地元民と大企業が対立するかのような展開も出てきますが、最終的に敵、味方という構図に縛られずに、解決策を一緒に探していった点にも共感できて、身勝手な政治に振り回される時代は長く続いていますが、時代を問わず、解決策のお手本となるようなストーリーが描かれています。自分の夢を諦めて、代々受け継ぐ土地がある町の将来を背負う青年、問題を起こしている企業に所属しながらそれを中から解決しようともがく青年、一度は問題に立ち向かったが対処できず諦めてしまった企業家など、さまざまな立場で葛藤するキャラクターがいるので、誰かしらに感情移入して観られると思います。
ラブストーリーの要素もあり、ロマンチックなシーンもありますが、ベースが社会派ドラマなので、デートの雰囲気が高まるというタイプの作品ではありません。ただ、いろいろなものを背負って生きる人々のお話なので、仕事で大変そうな時、家のことで大変そうな時に、本作を一緒に観ると、普段は口にしない苦労について少し吐露するきっかけにできるかも知れません。
学校の授業では、大きな流れの中の日本史を知ることができますが、こういった映画からは、日本の産業、企業の歴史を知ることができるので、勉強にもなると思います。土地に対する愛着を持つ人々の心情などにも注目すると、どこに住むかという問題が、人にとっていかに重要かというのも少し理解できると思います。
『ある町の高い煙突』
2019年6月14日ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくばにて先行公開
6月22日より全国公開
エレファントハウス、Kムーブ
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TEXT by Myson