養子縁組をした夫婦と、生みの親の物語。育てたくても育てられない14歳の母と、夫の無精子症で子どもを作ることを諦めて養子縁組をした夫婦。それぞれ心に強い痛みを抱えながら前に進む姿に胸を打たれます。
中盤はサスペンス的な展開が印象的で、突然現れた女性が誰なのかというところから始まる犯罪を匂わせる展開にハラハラドキドキします。同時に、子どもが奪われるかもしれないという恐怖や、子どものためにどうすることが1番良いかと悩む育ての両親の姿が描かれていて、子どもを育てるって本当に大変なことだと実感させられます。
ひかりを演じた蒔田彩珠の演技も見事で、彼女の名演によって、若者が抱えるさまざまな心情や、それを整理できず複雑なまま抱える辛さ、大人のように器用にできないからこそのもがきもリアルに伝わってきます。不妊治療における夫婦の苦労なども描かれているので、年代を問わず女性に響く内容になっています。
自分とパートナーという2人の関係に、子どもが加わるということがいかに大きなことかを実感できます。序盤は不妊治療にも触れていて、男女それぞれの心情も描かれています。結婚を意識しているカップルや、これから子どもを作ろうと考えている夫婦は、本作を一緒に観て、そこから得られる情報や当事者の気持ちを共有すると、今後いろいろと相談する上で、役に立つことがあるかもしれません。
本作と同じような境遇、状況になくても、親達は皆さんが思っている以上に、いつも心配しているのだということが観てわかるでしょう。またティーンの皆さんはこれから恋をして、深い関係に進展していくこともあると思いますが、その行為にどんな可能性があるのかを知っておくことは必要だと思います。「私には起こらない」とは誰も言い切れません。男女が結ばれる重みは、恋愛感情の問題だけでないことを知るきっかけになると思います。
『朝が来る』
2020年10月23日より全国公開
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト
©2020『朝が来る』Film Partners
TEXT by Myson