ペドロ・アルモドバルが製作ということ以外は、全く前情報を入れずに観たので、相当驚きました。クリクリの金髪でまだあどけなさが残る17歳の主人公カルリートスは、一見無邪気で人懐っこく、まさに天使のようです。でも実は、彼のモデルになったカルロス・ロブレド・プッチは1971年から1972年にかけて強盗と11人もの殺人を犯した実在の連続殺人犯。そんな二面性を持つカルリートスの犯行の様子には、罪悪感など見えず、衝動的というほど熱もなく、興奮している様子もありません。なのでモノを盗む時、人を殺す時の彼の様子はあまりに無機質で、欲望から犯行に及んでいるようには見えないのですが、一方ですべて思うようにいかないと気が済まない幼稚さがあり、何かを求めているというよりも答えを探しているような掴み所のない感情を抱えているようにも見えます。そして、主演のロレンソ・フェロの持つ雰囲気と演技が絶妙で、カルロス・ロブレド・プッチが持つ異名「黒い天使」が表すキャラクターを見事に体現しています。恐ろしい連続殺人犯なのに、人を魅了してしまう“魔力”を持つカルリートス。観ているこちらが罪悪感を背負わされてしまうような、ある意味恐ろしいエネルギーを持った秀逸な作品です。
映画的には良い意味でですが、「観てはいけないものを観てしまった」というような感覚で、観終わった後にちょっとボ〜ッとしてしまうくらい、とても見応えがあるので、映画を観慣れている相手なら誘っても良いと思います。とはいえ、連続殺人犯の実話で、人間の複雑な面を描いている点で、楽しくリラックスして過ごしたい初デートには向かないでしょう。
R-15なので15歳未満の人は観られません。主人公が17歳なので、同世代のティーンの皆さんは等身大で何か感じ取れる部分があるのではないでしょうか。本作の公式資料によると、ルイス・オルデガ監督は、カルロス・ロブレド・プッチが犯罪に魅せられた理由について「(前略)若者にとっての犯罪は、自由を渇望した先に生じるもの、いわば自然権のようなものなのかもしれない」と語っていて、さらに若者の犯罪は生を実感するためのものではないかと分析しています。ティーンの皆さんならどう分析しますか?若い皆さんの意見を聞いてみたい作品です。
『永遠に僕のもの』
2019年8月16日より全国順次公開
R-15+
ギャガ
公式サイト
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TEXT by Myson