苦いシャレが効いたフレンチ・ラブコメディで、ロマンチックというよりも、皮肉描写にクスッと笑ってしまいます。「恋をすると人は盲目になる」とよく言いますが、本作は逆に、盲目になれずに素直に恋ができない男女のドタバタ喜劇といった感じです。でも、純粋な恋ができない男女2人(大尉とエリザベット)が哀れに見えるわけではなく、この2人がペテン師的素質を持っている点で似た者同士で引き寄せ合っている点がおもしろい。同時に、ノエミ・メルランが演じるポリーヌと、クリストフ・モンテネーズが演じるニコラは、ジャン・デュジャルダンが演じる大尉、メラニー・ロランが演じるエリザベットとは違って、普通に恋をしますが、彼らのほうがむしろ本性を隠しているとも取れて、恋愛での“偽り”にもいろいろあるということが巧みに描写されていると言えます。とにかく、前述の4人のキャラクターが皆魅力的で、何度も「なんでやねん!」と心の中でツッコミながら観るのが楽しい映画。綺麗事はなく、「そりゃ、そうだわな」と納得して笑って終えられるオチが、これまたシャレてるな〜と、フランス仕込みのビターな笑いを堪能できます。
気まずくないような、気まずいような、2人の関係性に寄ってという感じでしょうか(苦笑)。円満なカップルは、高みの見物で気楽に楽しめるとは思います。誰もがこんなあからさまに怪しい男に騙されるわけがないと思って本作を観ると思いますが、恋は盲目なので、自分が当事者の場合に見抜けるかはわかりません。そういった意味で、不可解なところが気になっている相手と交際している場合は、1人でじっくり観て、自分達の関係を振り返るのが良さそうです。
女の子にとっては、「将来こういう人には引っかかるな」と恋愛の教訓にできそうなところはありますが、大人のシュールな人間関係が描かれているので、キッズに堂々とオススメするという感じではありません(笑)。中学生以上なら、こういったカラッとしたラブコメディを通して、少しでも恋愛の勉強になるなら、観ても良いと思います。
『英雄は嘘がお好き』
2019年10月11日より全国公開
松竹
公式サイト
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TEXT by Myson