1976年に起きた、イスラエル・テルアビブ発パリ行きのエールフランス機ハイジャック事件を映画化。約240名の乗客を人質にしたハイジャック犯は4人で、うち2名はパレスチナ解放人民戦線のパレスチナ人、あとの2人は革命を志すドイツ左翼急進派でした。当時の世界情勢が頭に入っていないと、人物相関図、国同士の関係性を把握するのに少々苦労しますが、国同士の駆け引きに注目して観るのか、ハイジャック犯や人質、政府関係者など個人にまつわる人間ドラマとして観るかによって、作品を観た後の印象も変わってくるでしょう。ハイジャック犯については、革命家としての部分と、1人の人間としての部分が、それぞれの犯人の心の中で葛藤していて、事件解決までの真相を知る以外に、いろいろな立場の視点を想像することもできます。また、ハイジャック犯と人質の間で生まれた交流が描かれることで、余計に「1人の人間同士なら交流できるのに、なぜ?」という思いも増幅させられます。そして、人質の現場と政府関係者の会議の場の対比によって、政治と国民との距離を感じさせられる内容になっています。
正直なところテーマというか、背景が複雑で、とっつきやすい作品とは言えません。政治に関心がある人同士なら会話も弾むかも知れませんが、それ以外の人に関しては、デート向きではないでしょう。ある程度知識があるほうが頭に入りやすいので、自分の知識だけでは不安な人は、観終わった後に解説してくれそうな友達と一緒に観るほうが良さそうです。
近代史を勉強している学生なら、こういった実際の事件をきっかけに歴史を知ると、もっと興味が湧くでしょう。観終わった後に詳細を調べてみるのもありですが、事前に多少調べてから観たほうが、国家間の問題なども頭に入ってきやすくなります。映画を観ながら勉強にもなるので一石二鳥ですね。
『エンテベ空港の7日間』
2019年10月4日より全国順次公開
キノフィルムズ、木下グループ
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TEXT by Myson