前半は笑いどころ満載。バカなことをやればやるほど力が増すという設定に親近感が湧き、アホらしさが無垢と愛おしさを感じさせます。物語が展開するにつれカオスを極めていき、どうやって終わるのかまったく見えないなか、徐々にこの物語が語ろうとしている根幹に近づき、とても哲学的でエモーショナルなストーリーへと変化していく様は見事です。よくここまでのカオスをまとめたなと感心してしまうと同時に、とても愛に包まれたストーリーとして完成させた点で秀逸です。
マルチバース及び一見ぶっ飛んだ世界を舞台としながら、実は私達が生きる世界はマルチバースの統合された世界なのではないか、私達はさまざまな顔、生き様を統合した存在であることの比喩ではないかと思えてきます。私達は何者にもなれるし、どこへでもいける。でも選択してここにいる。選択して今の自分がいる。実は、なりたかった自分、なれなかった自分、今の自分、すべていっぺんにここにいると、観終えた後は最強になった気分にさせてくれますよ(笑)。
また、キャストも最高です!まず、この主人公を演じられる俳優はミシェル・ヨー以外考えられません。さらにキー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティスなど、脇を演じた面々も魅力的で、カンフーもコメディも楽しめるし、後半はグッとくる愛の物語も味わえます。“岩”が語るユニークなシーンも印象的。作品に込められたメッセージをそのままこの作品作りの姿勢に反映して、枠にハマらない描写をしている点でも共感できます。
いや〜、スゴイものを見させてもらいました!映画を観る醍醐味、興奮をくれる作品ですので、お見逃しなく。
めちゃめちゃカオスな映画で、笑えるポイントも多く、和やかな雰囲気で観られると同時に観終わった後の会話も弾みそうです。ただ、灰汁が強い作品なだけに、好みは分かれるかもしれません。普段あまり映画を観ない方を誘う時や、初デートの場合は、相手の好みを聞いてから誘うべきか決めると安心です。
10代特有の喪失感と絶望感も描かれているので、ティーンの皆さんも共感できると思います。混沌としている描写がおもしろくて、キッズやティーンの皆さんにこそウケそうな設定も詰まっています。小学校高学年以上なら物語についていけると思うので興味を持ったらぜひ観てみてください。親子のストーリーでもあるので家族で一緒に観るのも良いですよ。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
2023年3月3日より全国公開
ギャガ
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TEXT by Myson