これは、黒澤明監督の『生きる』をリメイクした作品で、ノーベル賞とブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロが脚本を務めています。ビル・ナイが演じる主人公ウィリアムズは、長年役所に勤めていましたが、ある日余命宣告を受けます。残りの人生を本当の意味で「生きたい!」と感じたウィリアムズでしたが、いざ決意してもどうしたらよいのかわかりません。そんななか、役所の職員の中でも楽しそうに働いていたマーガレット(エイミー・ルー・ウッド)に街でばったり出くわし、彼女と過ごす時間の中で徐々に、最期を迎えるまでの時間をどう過ごすべきかに気付いていきます。
本作は主人公の最期の輝ける瞬間を描いているだけではなく、とても現実的な面も映し出しています。人は余命がわかったところで、それまでの生き方をすぐに変えることはできません。また、先人からそのことを教わり、直後に生き方を真似ようとしたとしても、“日常”に毒されて空虚な毎日を送り、またその日常が空虚であることにすら気付かなくなってしまう恐ろしさを物語っています。だからこそ、物語に込められたメッセージを届けようという強い意志が伝わってきます。これは主人公と同じ老年者に向けた作品というだけではなく、若者にこそ向けた作品であるともいえて、ある種のクライマックスの後に描かれるシーンの重みを感じさせます。
自分の人生観を振り返る機会を与えてくれるストーリーなので、これからの人生を共に生きようと思える相手と観て、感想を話し合うと良いでしょう。一方で、惰性で交際を続けているカップルは、このままではいけないと思うかもしれません。カップルとしてそれを望むか望まぬかは抜きにして、何らかの刺激はもらえると思います。
キッズやティーンの皆さんにとってはまだピンとこない部分もあると思います。ただ、高校生や大学生など、まもなく社会に出ていく皆さんにはこれからの日々をできるだけ大切に生きるために頭の片隅に置いておいて欲しいことが本作には描かれています。興味を持ったらぜひ観てみてください。
『生きる LIVING』
2023年3月31日より全国公開
東宝
公式サイト
© Number 9 Films Living Limited
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ブルーレイ&DVD発売中/デジタル配信中
Amazon Prime Videoで観る
TEXT by Myson
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