本作はのっけからインパクトが強いシーンが並び、「これって、どんなストーリーなんだろう?」とまず引き込まれます。そして、きっとストーリーが進むにつれてだんだんその真相がわかるに違いないと期待するのですが、その期待は見事に裏切られてしまいます(笑)。話が進めば進むほどわからない!伏線が回収されているようでして、そうでもない(笑)。でも、きっとこれってそう意図されて作られてるんでしょうね。私はその術中にハマってしまいました。
描写が強烈なシーン、情緒的に気になるシーンと、それぞれのシーンにどうしても解釈を入れたくなりますが、そうすることは不要であり、無駄なことなのかもしれません。この混沌自体が本作が伝えようとする1番のテーマなのかもしれないと感じました。同時に、解釈を付けようとすればいくらでも付けられるし、至るところに強いメッセージがあります。本作を撮ったキリル・セレブレンニコフ監督は、これまでもロシア政権に批判的な姿勢をとってきているそうです。そのことは本作を観れば、いろいろなシーンで感じ取ることができます。また、日本で劇場公開されるタイミングとして、どうしても今(2022年4月現在)起きているロシアとウクライナの問題が頭をよぎります。その背景に歴史的にロシア社会に刻まれてきた慣習や思想、変化を拒む体質(皆ではなく一部の人の)などが絡んでいるのではと想像させられます。
ある意味、“ぶっ飛んでいる”という表現も当てはまるクセの強さも魅力です。1度観ただけでは噛み砕けないかもしれませんが、嚙めば嚙むほど味が出てきそうな作品です。
突発的にビックリさせられる刺激の強いシーンが出てくるので、デートには向いていないでしょう。ただ、観終わった後にいろいろ話したくなる作品なので、映画で語るのが好きなカップルにはもってこいの作品です。ヌードも結構出てくるので交際が浅いカップルは気まずいかもしれませんが、“ただ服を着ていない人”というくらい自然体で登場するので、そこはだんだん慣れてくるのではないでしょうか。好みは分かれると思うので、2人とも観たいという場合に観ることをオススメします。
R指定的には15歳になれば観られますが、映画を観慣れていないとキョトンとして終わる可能性があります。ちなみに私は映画をたくさん観ていますが、正直キョトンとなりました(笑)。それはそれで1つの貴重な映画体験なので、興味があれば観てみてはいかがでしょうか。ホラーではありませんが、見た目に怖いシーンが唐突に出てくるので、苦手な方は日中の明るいうちに観るほうが良いかもしれません。
『インフル病みのペトロフ家』
2022年4月23日より全国順次公開
R-15+
ムヴィオラ
公式サイト
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TEXT by Myson