本作にはアメリカ最大の未解決事件と言われている、全米トラック運転組合のリーダー、ジミー・ホッファの失踪、殺人事件をもとに、アメリカの政治史と裏社会の結びつきが描かれています。日本人には馴染みのない話題ではありますが、詳しいことがわからなくても、ロバート・デ・ニーロが演じる男の生き様を描いた人間ドラマとして、とても見応えがあります。本作のメインキャストは、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ。この3人がもう本物にしか見えないくらい、この世界に溶け込んでいて、その名演に鳥肌が立ちます。正直なところ、ドンパチはあっても見た目の派手さはそれほどなく、3時間半、淡々と物語が過ぎていくだけですが、なぜこんなに惹きつけられてしまうのか、この俳優達、マーティン・スコセッシ監督の手腕にしびれます。で、思わず俳優3人の実年齢を調べちゃいましたが、アル・パチーノは1940年生まれ、ロバート・デ・ニーロとジョー・ペシは1943年生まれですよ!80歳近いだなんて全然感じない、まだまだ現役ですね。3人が演じるキャラクターはとても魅力的で、彼等が重ねてきた年輪が、そのままキャラクターの深みにも通じているように見えて、哀愁を倍増させています。Netflixのオリジナル映画なので、家のテレビで観ましたが、映画館で観ないともったいないくらい重厚な作品です。
3時間半という長さと、見入ってしまう内容というところで、デート向きではないのかなと思います。2人とも映画が好きなら全然問題ありませんが、一方が映画を観慣れていない人だと、テンションの違いが生まれそうです。家で観るとなると、気楽にしゃべりながら観たい人、家でも黙って集中して観たい人と、そこでもタイプが分かれそうですが、片方の集中力が切れた時にもはやデートではなくなる気がします(苦笑)。1人でじっくり観るか、同じテンションで臨める人と観るのが良さそうです。
ロバート・デ・ニーロが演じる主人公の子どもの目線も描かれていて、大人とは違う感覚で観られる部分はあると思いますが、かなり渋い作品で、上映時間が3時間半もあるので、子ども向きとは言えません。殺しのシーンは一瞬にして終わることが多いので、怖すぎるというほどでもありませんが、それなりに刺激はあるので、大人になってから観てください。
『アイリッシュマン』
2019年11月15日一部劇場にて公開、11月27日よりNetflixにて配信開始
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TEXT by Myson