切ないストーリーだとわかっていながら観るのでキュンとしてしまうのはもちろんなのですが、とても心温まるストーリーです。そんな本作は実話を基にしています。若くして不治の病を患いながらも1人で4歳の息子マイケルを育てる33歳のジョンが主人公です。ジョンは自分の命が尽きる前にマイケルの“新しい家族”を探そうと、マイケルも連れて何組もの候補に会いに行きます。同時に、ソーシャルワーカーからはマイケルにジョンが余命わずかであることを伝えるようにと助言を受けますが、ジョンはマイケルに悲しい思いをさせまいと必死です。でも、ジョンの思いをよそにマイケルは父の姿を見ていろいろなことを学んでいきます。
まず、マイケルが本当に可愛くて、キャラクターとして魅力的なのはもちろんのこと、マイケルを演じるダニエル・ラモントの名演に驚かされます。特にジェームズ・ノートン演じる父ジョンとの掛け合いでとる“間”が絶妙で、難しいテーマを扱っているだけにこんなに幼いのにどこまで理解して演技をしているんだろうと興味が湧きます。彼の姿を観ているだけで本当に癒されます。そして、ジェームズ・ノートンはこれまでもさまざまな作品で演技力を証明してきましたが今回も息子のために難しい決断を迫られる父ジョンを好演。自分がいなくなった後の息子を思い、時に厳しく、時に優しく振る舞う姿はとても温かく、心に響きます。
本作は、幼い息子に自分の死をどう伝えるべきか、そして息子を養子に出す上でどんな家族が良いのかというテーマで描かれており、とても見応えがあります。映画好きに観て欲しいのはもちろんのこと、お子さんがいらっしゃる方、教育や福祉関係のお仕事をされている方にも観て欲しい1作です。
優しい気持ちになれるので、デートで観るのもアリですが、涙もろい方はハンカチやメイク直しは持参したほうが良いでしょう。家族になろうと考えている相手と観る場合は、映画の感想を語り合うと、子どもの教育に対する考え方などが自ずとわかるかもしれません。お互いの家族の話をするきっかけに観るのもアリでしょう。
死生観がテーマの1つなので、マイケル(4歳)と同じような年齢のキッズにはどこまで理解できるかわかりませんが、とても大切なことなので、例えば小学生以上なら大人の判断で親子で一緒に観るのも良いかもしれません。大人が考えている以上に子どもはいろいろなことをわかっていると実感させられる内容です。なので、逆に大人に対してもっと話して欲しいと思っているキッズやテイーンの皆さんは家族を誘ってみてはどうでしょうか。
『いつかの君にもわかること』
2023年2月17日より全国順次公開
キノフィルムズ
公式サイト
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TEXT by Myson