一組の夫婦とその親友が過ごした日々を綴った本作は、2015年、「Esquire」に掲載され全米雑誌賞を受賞したマシュー・ティーグ(劇中ではマット・ティーグ)によるエッセイを映画化したものです。この物語は妻のニコル(ダコタ・ジョンソン)がガンを宣告される前後で時間軸を行き来しながら語られていきます。仕事や子育てなど、夫婦としての人生にはさまざまなことが起こりますが、2人の共通の親友デイン(ジェイソン・シーゲル)が彼等のそばでいつもそっと見守る姿が印象に残ります。それはもう親友を通り越して家族といえるほどの絆なのですが、なぜ3人がそこまでの繋がりを持っているのか、最初のうちは観ているこちらも謎に思える部分があります。でも、彼等それぞれにどんな出来事が起こり、彼等の絆がどうやって強くなっていったかがわかってくると、そんな謎も消えていきます。
ティーグ一家とデインとの関係は本当に特別でとても素敵です。こんな縁に巡り合える人はなかなかいないのかもしれませんが、人間同士の繋がりに希望が持てます。“家族”というと私達は血の繋がりに固執してしまいがちですが、本作は人は血の繋がりを超えてこれほどにも心を繋ぐことができるのだと教えてくれるストーリーです。そして、人からどんな風に見られようと関係ないし、逆にこちらが第三者の場合も見た目だけではわからない背景がたくさんあって、それを外野がとやかくいう筋合いはない、世の中にはいろいろな関係があっていいのだと強く思わせてくれます。ガン宣告というキーワードからお涙頂戴のストーリーかと逆に構えてしまう方もいるかもしれませんが、実際本作を観れば違うことがわかると思います。純粋に友情の物語として広く共感できる物語です。とても温かいストーリーなので、心が疲れている方はぜひ癒されてください。
マットとニコルの間に起こる問題は万国共通でとてもリアルです。夫婦で観れば自分達を客観視できるし、今結婚を視野に入れて交際しているカップルの皆さんは、将来を少しシミュレーションできるのではないでしょうか。また、うまくいかないことがあると自分だけが頑張っていると思ってしまって余計に辛くなることがありますが、影で支えてくれている人がいることにも気付かせてくれるストーリーなので、視野が広がるきっかけになり、お互いに優しい気持ちになれると思います。
皆さんはティーグ家の2人の娘の目線で共感できるところがあると思います。子どもを守りたい一心で親が嘘をついたり隠し事をすることは皆さんの周りでもあると思いますが、本作を観ると親目線を少し想像しやすくなるかもしれません。もちろん大人の都合を理解してということではありませんが、一方的な想像を膨らませてイライラしたり悶々とすることは減ると思います。また、これは大人が主人公ではありますが、友情の物語なので年齢問わず心に響く部分があると思います。本作を観ながら思い浮かべられる友達がいたら、その大切さに改めて気付くこともできそうです。
『Our Friend/アワー・フレンド』
2021年10月15日より全国公開
STAR CHANNELMOVIES
公式サイト
© BBP Friend, LLC –2020
TEXT by Myson
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