本作は、一人娘を亡くしたシングルマザーの苦悩を描いた短編映画です。主人公の安川良子の娘、裕美は天然パーマをからかわれ、クラスメイトからいじめられていました。裕美は、ある日帰らぬ人となってしまい、良子は裕美が事故で亡くなったとばかり思っていました。そんなある日、良子は裕美の同級生から耳を疑う話を聞きます。
ここから先は映画でご覧いただくとして、本作は約30分という短い間に母親達のさまざまな感情が渦巻く濃厚な作品となっています。それぞれの子ども達の事情は異なりますが、母親達は共通して「うちの限って」という心情を持っています。皆が自分の子ども達を信じて、必死に守ろうとします。そんな母親達の激しい感情がぶつかり合うシーンは鬼気迫るものがあります。そして、まさかの展開が繰り広げられ、観る側は唖然としてしまいます。でも、これが母親なんだろうなと実感させられます。なぜ『うまれる』というタイトルがついているのだろうと思いましたが、子どもを産み母になるとはこういうことなんだなと感じます。子どもが生まれてからずっと、毎日母親はこんな気持ちでいるのだなと思うと想像を絶します。お子さんがいらっしゃる方が観るのと、そうでない方が観るのとでは異なる部分もあるとは思いつつ、「母親とは」という定義の一つを見せつける作品となっています。
デート気分も吹っ飛ぶ内容ですが、一生を共にし、将来子どもを持ちたいと考えているカップルなら、一緒に観るのも良いかもしれません。また、お子さんがいらっしゃる夫婦も一緒に観て、子育てについて相談する機会にするとどうでしょうか。母親しか登場しない点も、子育てで母親だけに負担がかかっている世の中の状況を客観視できそうです。子育てについて話し合いたいカップルは敢えて2人で観てみてください。
映画だからこそのシチュエーションで、お母さんが子どもを守ろうといかに必死なのか客観視することができます。子どもが考えている以上に、お母さんは子どものことを思っているのが伝わってきます。本作を観たら、お母さんに心配をかけたら申し訳ない気持ちになると思います。そして、いじめの代償が大きいことを感じて欲しいです。とても激しい内容の映画ですが、15歳以上になったら観てみてください。
『うまれる』
2023年6月23日より全国順次公開
R-15+
ニチホランド
公式サイト
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TEXT by Myson