REVIEW

ウェルカム トゥ ダリ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ウェルカム トゥ ダリ』ベン・キングズレー/バルバラ・スコヴァ/アンドレア・ペジック

クスッと笑える冒頭シーンから序盤までは、ダリ(ベン・キングズレー)と妻のガラ(バルバラ・スコヴァ)の破天荒な暮らしぶりに驚かされながら、全般的には切ないラブストーリーといえます。アーティストとして生きるダリの成功と苦悩の裏には、妻ガラがいて、ガラの存在が支えでもあると同時に悩みの種でもあります。ダリのミューズであるガラは、マネージャーとしてもダリを支えますが、一方で若い歌手に大金を貢いでいます。ダリも若い美女を脇に置き、夫婦はお互いにやりたい放題でバランスを取っているように見えながら、それぞれに孤独を簡易的に埋めていて、特にダリにとってはガラでなければ埋められない部分が多いことが伝わってきます。ガラはガラで自分の存在意義を確かめているような節もあり、とても複雑な2人の関係が描かれています。
芸術家の創作活動がいかに過酷であるか、芸術家がいかに孤独であるかは、ダリに限らず、これまで制作されてきた他の画家の映画でも描かれてきました。本作は、ダリの妻ガラにも焦点を当てている点で、芸術家のパートナーの苦悩や孤独を浮き彫りにしています。ガラの散財ぶりにハラハラしながら、ふと吐露されるガラの本音を聞くと、彼女の気持ちもわからなくもありません。そして、現代に本作が作られたことで、ガラに対する共感も得られる時代になったのではないかと思える部分があります。ガラが貢いでいたのがお金という点では少し共感にハードルを感じる部分も否めないものの、ダリを影で支えてきたガラの手に残るものがお金しかなかっただけで、もしも違う時代に彼女が彼女自身の才能を別で発揮できることがあったなら、また違った存在の示し方をしたのかもしれません。
本作はジェームズ(クリストファー・ブライニー)という名の美しい青年の目を通して描かれていて、観る方によって感情移入する人物も変わるでしょう。さまざまな捉え方で楽しんでください。

デート向き映画判定
映画『ウェルカム トゥ ダリ』ベン・キングズレー/アンドレア・ペジック

気まずいほどではありませんが、セクシャルな話題も出てくるので、相手の反応が読めない初デートでは避けたほうが良いかもしれません。固い絆で結ばれつつも、歪な関係に陥っている夫婦の物語です。この関係で幸せなのかどうかは本人達にしかわかりませんが、1つの夫婦の在り方として参考にしつつ、自分達の人生観、恋愛観を見直すきっかけにしてはどうでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ウェルカム トゥ ダリ』エズラ・ミラー

いろいろな経験をして、いろいろな人に出会って、恋愛も経験してから観たほうが、一層本作のストーリーに感情移入できると思います。また、ダリってどんな絵を描いた人なのか知った上で本作を観たほうが、一層楽しめるでしょう。美術に興味がある方はもちろん、クリエイター、アーティストを目指す方も観てみてください。

映画『ウェルカム トゥ ダリ』ベン・キングズレー/バルバラ・スコヴァ/クリストファー・ブライニー/エズラ・ミラー

『ウェルカム トゥ ダリ』
2023年9月1日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2022 SIR REEL LIMITED

TEXT by Myson

本ページの情報は2023年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『トラブル・ガール』ジン・ジアフア監督インタビュー 『トラブル・ガール』ジン・ジアフア監督インタビュー

今回は『トラブル・ガール』のジン・ジアフア監督にメールインタビューをさせていただきました。本作の人間模様や物語について直撃!

映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード 『あの歌を憶えている』特別一般試写会 5組10名様ご招待

映画『あの歌を憶えている』特別一般試写会 5組10名様ご招待

映画『雪の花 ―ともに在りて―』松坂桃李/芳根京子 雪の花 ―ともに在りて―【レビュー】

江戸時代末期に猛威を振るい、多くの人々の命を奪った疱瘡(天然痘)。当時打つ手がないと考えられていたこの病に立ち向かったのが…

映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』ルイス・クー トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦【レビュー】

物語の舞台となる九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)は、かつて香港に実在したスラム街…

映画『アーサーズ・ウイスキー』ダイアン・キートン/パトリシア・ホッジ/ルル アーサーズ・ウイスキー【レビュー】

何も知らずにそのウイスキーを飲んだ3人は酔い潰れた翌朝に目覚めると、自分達が若返っていることに気づき…

映画『私にふさわしいホテル』のん のん【ギャラリー/出演作一覧】

1993年7月13日生まれ。兵庫県出身。詳しいプロフィールは→所属事務所公式サイト/『私に…

映画『室町無頼』大泉洋 室町無頼【レビュー】

直木賞を受賞した垣根涼介著「室町無頼」を映画化した本作の舞台は室町時代。主人公の蓮田兵衛(大泉洋)は…

海外ドラマ『コンコルディア/Concordia』ルース・ブラッドリー コンコルディア/Concordia【レビュー】

『ゲーム・オブ・スローンズ』『THE SWARM/ザ・スウォーム』などを手がけたフランク・ドルジャーが製作総指揮を務める本シリーズは…

映画『勇敢な市民』イ・ジュニョンさんインタビュー 『勇敢な市民』イ・ジュニョンさんインタビュー

今回は『勇敢な市民』で悪役ハン・スガンを演じたイ・ジュニョンさんにお話を聞かせていただきました。劇中の怖い雰囲気とはガラリと変わり、穏やかで笑顔あふれるインタビューとなりました。

映画『ドライブ・イン・マンハッタン』ダコタ・ジョンソン/ショーン・ペン プレミア試写会『ドライブ・イン・マンハッタン』#匿名の夜 10組20名様ご招待

プレミア試写会『ドライブ・イン・マンハッタン』#匿名の夜 10組20名様ご招待

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

映画『ソルト』アンジェリーナ・ジョリー 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】個性部門

本部門で上位にランクインしたのはどの俳優なのでしょうか?2024年のイイ俳優ランキングは今回がいよいよ最終回です。ぜひ最後まで結果を見届けてください!

映画『聖杯たちの騎士』ナタリー・ポートマン 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】演技力部門

イイ俳優ランキング【海外40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。錚々たる俳優が揃うなか、総合と比べてどのようにランキングが変化したのでしょうか?

REVIEW

  1. 映画『雪の花 ―ともに在りて―』松坂桃李/芳根京子
  2. 映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』ルイス・クー
  3. 映画『アーサーズ・ウイスキー』ダイアン・キートン/パトリシア・ホッジ/ルル
  4. 映画『室町無頼』大泉洋
  5. 海外ドラマ『コンコルディア/Concordia』ルース・ブラッドリー

PRESENT

  1. 映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード
  2. 映画『ドライブ・イン・マンハッタン』ダコタ・ジョンソン/ショーン・ペン
  3. 韓国ドラマ『ヒョシムの独立奮闘記~恋と人生は私のモノ!?~』QUOカード、ユイ/ハジュン
PAGE TOP