ある天才開発者が簡単にファイルを共有できる革新的なソフトを開発するも、悪用する人達が続出してしまい、開発者が不当逮捕されてしまうという実在の事件をもとに描かれた本作。監督は、自主映画『Noise ノイズ』(2019)で海外映画祭にて高い評価を受け、『ぜんぶ、ボクのせい』で商業映画デビューを果たした松本優作が務めています。
主人公の金子(東出昌大)は、プログラミングが心から好きな人物で、決してソフトを悪用するために開発したようには見えません。でも、彼は著作権法違反幇助の容疑をかけられ、逮捕されてしまいます。そんな彼を救うために、壇(三浦貴大)をはじめとした弁護士達が立ち上がり、奔走する姿はとても胸を打たれます。また、警察相手という困難な状況でありながら、金子と弁護士達が入念に擦り合わせを行い、裁判に臨む姿も印象に残ります。
金子を演じた東出昌大をはじめ、三浦貴大、吉岡秀隆、渡辺いっけい、吹越満らキャストがそれぞれのキャラクターを真剣に演じている様子からは、実在した金子勇氏への敬意も感じます。また、金子勇氏本人の映像を観ると、東出昌大が話し方や雰囲気をかなり研究していることも伺えます。天才開発者、金子勇氏の未来がこの事件の影響で閉ざされてしまったと思うと、とても切なくなります。また同じことが繰り返されないためにも、まずは多くの方に本作を観て欲しいと思います。
実話をもとにした真実を追究する人間ドラマが描かれていて、恋愛を盛り上げる要素はなく、付き合いの長いベテランカップル向けの作品です。当時の事件を知っている方や実話をもとにした作品が好きな方なら、鑑賞後の会話が一層盛り上がりそうです。
中学生以上のティーンなら事件の全容がある程度理解でき、物語についていけるのではないでしょうか。金子の人柄や、ソフト開発に対する熱い想いは、皆さんも共感できると思います。また、弁護士達の行動からは、真実を追究することの大切さも感じられるはずです。
『Winny』
2023年3月10日より全国公開
KDDI、ナカチカ
公式サイト
© 2023 映画「Winny」製作委員会
TEXT by Shamy