REVIEW
1980年6月13日、アメリカのテキサス州ワイリーで、夫と子どもと暮らすベティ・ゴアが斧で41回殴られて惨殺されました。本作はこの実話に一部フィクションを交えて描かれたドラマです。ベティを殺したのは、以前にベティの夫と不倫関係にあったキャンディ・モンゴメリー(ジェシカ・ビール)。キャンディは夫のパット、娘、息子の4人暮らしで、一見順風満帆な日々を送っています。でも、キャンディとパットの関係はマンネリ化していて、キャンディは気晴らしに肉体関係だけの浮気をしようと思い付きます。キャンディは浮気相手として、ベティの夫アランに目を付けます。一方ベティは、いつもどこか不安な様子で、アランが出張で不在がちな状況にも不満を持っています。それぞれの夫婦がギクシャクしているなか、一方の家庭にある変化が起きたことで、キャンディとアランの関係にも変化が起き、事態は思わぬ方向に向かっていきます。
殺人事件が起こりそうもない空気感で始まりながらも、1話から突如物々しいシーンが出てきます。まず殺人が起きた日の一部を描き、一旦過去に遡って、間に何があったのかを描いた後、裁判までの出来事が映されていきます。副題にある“狂気”が意味するところは、斧での惨殺であるのはいうまでもありませんが、ベティ殺害後も平然を装うキャンディの様子にこそ狂気を感じます。
同じ事件をドラマ化した『ラブ&デス』より先に本作を観ました。本作の冒頭には、一部フィクションが含まれると表示されています。一方の『ラブ&デス』は「これは実話である」と表示されている点、ストーリーの違いからしても、本作のほうが脚色が多いと考えられます。ポイントとなる出来事や設定は両作で共通していて、本作のほうが実際のキャンディの見た目に寄せていながら、キャンディが殺人を犯した背景に繋がるキャラクター性には大きな違いがあります。その設定には当時の時代感では見えなかった女性像を体現したような実験的とも思える特徴が感じられます。ぜひ『ラブ&デス』とも比較しながらお楽しみください。
『キャンディ:隠された狂気』
2022年8月10日よりディズニープラス スターにて配信中
R-15+相当
ディズニープラス作品ページ
© 2024 Disney and its related entities.
TEXT by Myson