REVIEW
ミシェル・オバマ、ベティ・フォード、エレノア・ルーズベルト、3人のファーストレディの半生を描く本作は、複数の時代を行き来しながら、アメリカの歴史を綴っています。ちなみにミシェル・オバマの夫は第44代大統領バラク・オバマ、ベティ・フォードの夫は第38代大統領ジェラルド・R・フォード、エレノア・ルーズベルトの夫は第32代大統領フランクリン・ルーズベルトです。偶然なのかわかりませんが、ちょうど6代ずつ経たファーストレディを取り上げていますね。それはさておき、本作を観ると、3人のファーストレディがそれぞれに成し遂げた偉業がいかに社会に変化をもたらしたのかがわかります。
ヴィオラ・デイヴィスが演じるミシェル・オバマがファーストレディだった時期はつい最近のことなので記憶に新しい出来事もありつつ、オバマ夫婦の馴れそめや、オバマケアの背景にミシェルの過去が大きく関わっていることなどは、本作で詳しく知る方も多いのではないでしょうか。また、ドナルド・トランプ大統領誕生直前、オバマ夫妻はどんな立場にあったのかも想像以上に赤裸々に語られています。
ミシェル・ファイファーが演じたベティ・フォードの夫、ジェラルド・R・フォード大統領(アーロン・エッカート)は、ニクソン大統領がウォーターゲート事件を起こしたため、副大統領から昇格して大統領になりました。とても難しい局面で大統領にならざるをえなかった夫を支えるベティにも大きな重圧がかかるなか、彼女の枠に縛られない言動が多くの女性の支持を集めたのも納得です。一方で、ベティが抱えていた問題も包み隠さず公表されていたことに驚かされます。でも、こうした透明性の高さによって、ベティは多くの人の心を動かしたのだと改めて感じます。
そして、女性が社会で活躍できるよう礎を作った人物としてエレノア・ルーズベルトが登場します。孤高の才人エレノアは、ジリアン・アンダーソンが見事に演じています。エレノアとフランクリン大統領(キーファー・サザーランド)の夫婦関係は、他の伝記でご存じの方もいらっしゃると思いますが、かなり複雑な関係です。恋愛関係としては辛い部分も見えつつ、本作では国を動かす立場としては最高のパートナーだった部分も見られます。エレノアは国連が1948年に定めた世界人権宣言の起草に貢献した人物として知られていますが、本作を観ると、彼女の社会運動がどうやって始まったのかから知ることができます。
本作はこれまで大統領のお飾りのように扱われてきたファーストレディの枠組みを壊し、自身の声を世に届け、いかなる圧力にも屈せずに闘ってきた3人のファーストレディの姿を描いています。彼女達が闘ってくれたからこそ、今の社会があるのだなと実感します。本作は歴史を紐解く視点で楽しめるのはもちろん、人間味溢れるファーストレディや大統領一家の姿にも勇気をもらえる作品です。
また、キャストが驚くほど豪華なので映画ファンにもお勧めです。前述したキャストのほか、ダコタ・ファニング、ケイリー・スピーニー、ジュディ・グリアも登場します。年齢性別問わずぜひご覧ください。
『ファーストレディ』
2022年9月23日よりU-NEXTにて配信中
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TEXT by Myson
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