REVIEW
このドラマは、1980年代、女子プロレスがテレビ放映されていた時代に、最恐のヒールとして名を馳せたダンプ松本を主人公として、実在の人物や出来事を基に作られたフィクションです。鈴木おさむが企画、脚本、プロデュース、白石和彌が総監督及び1から3話の監督、白石和彌監督作で助監督を務めてきた茂木克仁が4、5話の監督を務めています。
物語の中心人物は、ダンプ松本こと松本香(ゆりやんレトリィバァ)、クラッシュギャルズの長与千種(唐田えりか)とライオネス飛鳥(剛力彩芽)です。本作の公式資料によると、ダンプ松本役のオーディションは2020年の秋に行われ、撮影は2022 年の7月から開始されたため、ゆりやんレトリィバァは約2年かけて身体作りをしたそうです。オーディションの前、ゆりやんレトリィバァは45kgの減量を実現したにもかかわらず、本作のためにまた増量し、撮影開始時の体重はオーディション前と比べると40kgも増えていたそうです。ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽の3人は、本シリーズでプロレススーパーバイザーを務める長与千種が設立したMarvelousprowrestlingでトレーニングを受け、撮影に臨みました。本編ではかなり激しいアクションシーンが満載で、撮影のためにかなり鍛えたことが伝わってきます。
そして、本シリーズでは観ているだけでビビってしまう緊張感のある戦いが描かれているのに加えて、激しい感情がぶつかり合うため、プロレスラーを演じる上での身体的な役作りだけでは足りなかったはず。だから、ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽とも、これまでテレビや他の映画では観たことのない姿に驚かされます。心優しい少女だった松本香がダンプ松本になった後、その凶暴ぶりは本当に恐ろしく、誰か死んでもおかしくないと思えるくらいです。生きるか死ぬかという緊張感のある戦いの迫力は凄まじく、俳優陣のエネルギーもビシバシと伝わってきます。
リングでの死闘はそのまま、本シリーズの一番の見どころである、ダンプ松本、クラッシュギャルズ達同期メンバーの人間ドラマを引き立てます。「なぜ、そこまでするの!?」と感情移入しながら観ずにはいられません。プロレスラーを夢見ていた少女達が支え合い、ぶつかり合いながらそれぞれの道を模索していく姿に心を打たれます。彼女達がこんなにも必死だった背景には、男性社会で女性の地位が低かったり、女性がやることに制限があったり、さまざまなものが見えます。今は情報がたくさんあって、器用に立ち回れたり、やる前に諦めてしまったりということが増えたように思います。だからこそ、なりふり構わず一心不乱に何かに打ち込む彼女達の姿が訴えかけてくるものは大きいと感じます。
『極悪女王』
2024年9月19日よりNetflixにて配信開始
公式サイト
TEXT by Myson
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