俳優も、監督も、スタッフも映画作りに命懸けで、人生を賭けているというのが伝わってくるエネルギッシュな作品。映画制作の現場で働くスタッフや俳優はもちろん、映画ライターのように周辺の仕事をしている人物まで、映画産業のリアルな姿を映し出しています。どんなに過酷で、どんなにコケにされてもなお、映画の世界で生きたい人達の姿を観て、同業者ならまるで自分を観ているような感覚になるはず。私もその1人です。もしかしたら、デイミアン・チャゼル監督をはじめ、この作品に関わる方は皆「なぜ、自分はこの仕事をしているのか。どんなに大変な思いをしてもやめられないのか」自分に問いかけながら作ったのかもしれません。その理由は皆それぞれだけれど、ここにいたくて、ここにしかいられない。どうしても手放せない映画愛と、その深い映画愛からくるジレンマが見事に表現されています。
映画界でカオスは日常。煌びやかだけど理不尽で獰猛な世界。だからおもしろくもあり、辛くもあります。明日どうなっているかもわかりません。でも、そんなサバイバルをしているからこそ、生きている心地は人一倍あるのかもしれません。ブラックユーモア満載で、『ラ・ラ・ランド』に通じる部分もあるといえるし、真逆から描いているともいえるストーリーです。また、デイミアン・チャゼル監督作の中では『セッション』で描かれたような情熱と狂気に通じるものを感じます。
映画界自体が今生き残りをかけて戦っているんだという叫びにも受け取れて、映画との大恋愛を描いているようであり、映画界への憎しみと愛を叫んでいるようにも受け取れます。
最後のさまざまな作品がズラッと映るシーンは、「だから映画が好きなんだ!」という気持ちが煽られて感無量。映画好きの心に共感の嵐を巻き起こすはずです。
セレブ感漂うキービジュアルですが、のっけから「えー!」となるシーンがあったり、ぶっちゃけ下品なシーンもいくつかあります。デイミアン・チャゼル監督の代表作『ラ・ラ・ランド』のイメージでいるとびっくりしてしまうので、その辺りを加味して相手を誘うか検討してください。映画好きカップルにはめちゃくちゃオススメです!
大人向けの内容ですが、強烈なシーンのいくつかはキッズが盛り上がりそうです。とはいえ、やはりさまざまな経験を経て、大人になってから観たほうが、本作を深いところで感情移入しながら観られると思います。映画にハマり出したティーンの皆さんは、共感具合によって、もっと映画を好きになるのではないでしょうか。
『バビロン』
2023年2月10日より全国公開
R-15+
東和ピクチャーズ
公式サイト
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TEXT by Myson