国連がイラクの石油を管理し、その販売金で買った食料を市民に配給するという目的で始められた人道支援計画“オイル・フォー・フード(石油・食料交換プログラム)”の裏には、汚職が横行していました。本作は国連職員としてイラク現地に飛び、その実態を目の辺りにしたマイケル・スーサンによる2008年の小説“Backstabbing for Beginners”が原作となっています。善い行いというヴェールに隠された悪行というところで余計に反感を覚えますが、国連ですらこうなのかと本当にガッカリです。映画では実際の人物の名称と変えた役名になっていますが、ストーリーを観ている限りでも、マイケル・スーサン氏(劇中ではマイケル・サリバン)はよく無事に帰国して告発できたなと、彼の勇気に感銘を受けます。こういった事実を知ることで、自分達の生活は他人任せにすべきではないと実感するし、私達はもっと政治や世界情勢に関心を持つべきだなと思います。そういう事実を広く、身近なこととして伝える役割としても、映画の存在の大きさを感じられた作品です。もちろんエンタテインメントとしても、テオ・ジェームズのカッコ良さ、ベン・キングズレーの名演も楽しめます。
社会問題を取り上げていて、実話がベースではありつつ、ロマンスの部分も展開に大きく関わってくるので、思っているよりも身近な物語に思えるのではないでしょうか。シリアスで堅い内容ではあるので、デート向きとまでは言いませんが、見応えがあるので、大人カップルが観るには良さそうです。
汚職を行う上でのカラクリは、キッズには少々ついていけない部分があるかも知れませんが、中学生以上なら理解できるのではないかと思います。人道支援って、人を助ける行いでしょと皆が知っていると思いますが、それを利用する悪い大人がいることを知るのは、一種の社会勉強にもなるでしょう。こういう作品を観ることにより、ニュースにアンテナを張るようになると、世界の繋がりがわかってくるので、社会が苦手という人こそ映画から興味を持つきっかけに観てみてください。
『バグダッド・スキャンダル』
2019年5月8日ブルーレイ&DVD発売&レンタル開始
キングレコード
公式サイト
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TEXT by Myson