本作は、1973年から1974年にかけて「ビッグコミック」で連載された、手塚治虫による大人向け漫画「ばるぼら」を、息子の手塚眞監督が実写映画化。撮影監督はクリストファー・ドイルが務めており、日本、ドイツ、イギリスの合同制作というグローバルな作品となっています。
道端でひどい身なりで倒れているばるぼら(二階堂ふみ)を、人気小説家の美倉(稲垣吾郎)が家へ連れ帰るところから物語は始まるのですが、原作の内容を知らずに観るほうが美倉と同じ感覚で、本作の世界観に没入できると思います。「今のは何だったの?」というシーンが後半につれてだんだん増えていくのですが、それこそまさに狂気の世界で、どこからが現実でどこからが幻なのかがわからなくなってきます。原作は実写不可能と言われていたそうですが、その所以は観てみるとわかります。
大人向け漫画というだけあって、エロティックな描写もふんだんです。二階堂ふみはヌードも惜しまず堂々と演じていて、稲垣吾郎も大人の色気をプンプンと漂わせています。手塚治虫と聞いて、どの作品を1番に思い出すかは世代や性別にも寄りそうですが、改めてラインナップを調べてみると、本当にバラエティに富んだジャンルを作られていたんだなと驚きます。ラストには「そうきましたか!」というシーンがありますが、その後にある最後の最後の仕掛けがまた、観る者を迷路に誘い混む演出で憎いです。
手塚治虫の漫画が原作と聞いて何を連想するかは人それぞれなので、「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」あたりを想起した人が、これをデートで急に観ると慌ててしまうかもしれません(笑)。ヌードや濡れ場がしっかりあるので、初デートや付き合いが浅いうちは、向いていないのではないでしょうか。1人で観るか、仲の良い友達を誘うと良いでしょう。
ポスタービジュアルからして子ども向けではなさそうだと気付いてもらえそうですが、R-15です。R指定が付いているという点だけでなく、内容そのものに関しても、稲垣吾郎が演じる小説家の葛藤は、大人になって仕事をしたりして、いろいろな経験を踏まえてから観たほうが感情移入しやすいと思います。
『ばるぼら』
2020年11月20日より全国公開
R-15+
イオンエンターテイメント
公式サイト
© 2019『ばるぼら』製作委員会
TEXT by Myson