REVIEW

バービー【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『バービー』マーゴット・ロビー/ライアン・ゴズリング

冒頭から最高に笑えると同時に、女子は子どもの頃から、ある価値観を植え付けられてきた事実に改めて気付かされます。人類の変化、文化の変化をユーモアたっぷりに描くこの冒頭だけ観ても、グレタ・ガーウィグ監督のセンスに脱帽です。時代は変わり続け、現代の子ども達もまた、異なる価値観を持っています。今新しい価値観、物の見方が必要になっている状況をバービーという圧倒的なアイコンを用いて見事に描いているのが本作です。
本作は、バービーが作り出してきた理想の女性像がもたらす功罪を描いています。それはケンも同じで男性がイメージに縛られる弊害も表現されています。単なるフェミニズムの主張に終わらないように描くのはかなり高度ながら、バービーランドと人間の世界が混乱状態に陥る展開でうまく表現しています。男女両方の目線で描いているので、女性だけではなく男性も共感できるところがあるのではないでしょうか。本作は、このグレタ・ガーウィグとノア・バームバックのコンビによる脚本も見事です。セリフはユーモアがいっぱいで、ウイットに富んでいて、哲学的でもあります。

映画『バービー』マーゴット・ロビー

そして、映画公式資料には、本作の発起人がマーゴット・ロビーだと記されています。製作も務めるマーゴット・ロビーについて、グレタ・ガーウィグ監督のコメントには、「彼女こそが映画化権を確保して、ワーナー・ブラザースに提案し、このプロジェクトを率いていた張本人だった」とあります。マーゴットは目のつけどころが素晴らしいですね。また、バービーはマーゴット以外に演じられる俳優はいないと思えるほどの再現度です。“典型的”なバービーが殻を破り、新しい自分を見つける姿は観る者の心を打ちます。

映画『バービー』ライアン・ゴズリング

本作では、ライアン・ゴズリングの魅力も最大限に活かされています。ケン役はライアン・ゴズリングに当て書きしたそうですよ(映画公式資料:グレタ・ガーウィグ監督のコメントより)。まず、ライアン・ゴズリングのキレキレの肉体美がすごいです。人形の不自然に完璧な肉体美を人間が再現しているのですから、かなり高度な業だと思います。そして、ケンの脳天気なところ、一見残念な人のようでいて憎めないキュートな面を見事に演じています。ミュージカルシーンもツッコミどころが満載で、歌とダンスが笑いを誘います。あと、シム・リウが本作ではユーモラスに別のケンを演じていて、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』とのギャップを感じてさらに笑えます。
服装や世界観がとにかく可愛いのはいうまでもありませんね。下記のバービー人形の世界観をそっくりそのまま実写化しています。でも本作は世界観をただ再現しただけではありません。若干自虐的な要素もユーモアを交えて入れながら、奥の深いストーリーに仕上げています。劇中に実名で登場する、バービー人形のメーカー“マテル・インターナショナル”の理解度の高さと協力姿勢にも好感が持てます。芸術と風刺とエンタメが見事なバランスの本作は何度でも観たくなります。映画ネタで笑わせるところも多いので、映画好きにも必見です。心地よく笑えて、ホロッときて、元気になれる最高の作品。グレタ・ガーウィグ監督は天才だと実感できると思います。本作は映画史に残る傑作です!

映画『バービー』ジャパンプレミアでの展示
映画『バービー』ジャパンプレミアでの展示
映画『バービー』ジャパンプレミアでの展示:人間等身大ボックス
映画『バービー』ジャパンプレミアでの展示:人間等身大ボックス(中に入って写真が撮れるフォトスポットになっています)
デート向き映画判定
映画『バービー』マーゴット・ロビー/ライアン・ゴズリング/シム・リウ

無意識に植え付けられてきた恋愛観があることにも気付かせてくれる本作は、カップルで観るのもオススメ。この世界観なので女子の映画と思われるかもしれませんが、性別を問わずぜひ観てもらいたい内容です。いろいろな感想が出てくると思うので、お互いの人生観も見えてくるのではないでしょうか。そして、お互いを尊重する気持ちも芽生えるはず。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『バービー』マーゴット・ロビー

楽しくて、感動的でもあり、哲学的でもあり、いろいろな大切なことを教えてくれる作品です。キッズやティーンの皆さんも必見ですよ。女性、男性という性役割がテーマの一つになっているので、性別を問わず観て考えさせられるところがあると思います。笑えるシーンも満載なので、ぜひ仲の良い友達を誘って観てください。世代間の考え方の違いも鑑賞後に語るとおもしろいはず。家族で観るのもアリですよ。

映画『バービー』マーゴット・ロビー/ライアン・ゴズリング

『バービー』
2023年8月11日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト

Amazonでブルーレイを購入する  Amazonプライムビデオで観る
U-NEXTで観る  Huluで観る

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページの情報は2024年3月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

第96回アカデミー賞®ノミネート:作品賞、助演男優賞(ライアン・ゴズリング)、助演女優賞(アメリカ・フェレーラ)、衣裳デザイン賞、作曲賞、脚色賞、★歌曲賞、計7部門
(★)は受賞した賞です。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

劇場版『トリリオンゲーム』今田美桜 今田美桜【ギャラリー/出演作一覧】

1997年3月5日生まれ。福岡県出身。

中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』オリジナルQUOカード(500円分) 2名様プレゼント

中国ドラマ『このロマンスはフィクションだから』オリジナルQUOカード(500円分) 3名様プレゼント

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  2. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  3. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』
  4. 映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ
  5. 映画『ベイビーガール』ニコール・キッドマン/ハリス・ディキンソン

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP