本作は、映画研究会に所属する大学生達が、部室で古い脚本を見つけ、未完のその作品の完成にチャレンジするという物語。主人公の大学生や脇役達は、私達が現実の世界で知っている俳優の芸名のまま(ただしカタカナ表記)で登場しており、役者達の演技もポイントだけ決められていて即興芝居という不思議な作りの映画です。また、劇中で学生等が撮ろうとしている作品も私達の現実世界に実存する作品(本作のタイトルがヒントになっています)で、夢と現実の世界が酷似しています。恐らく広い意味での”夢”がキーポイントで、夢と現実がとても近いところにあることと同時にその境界線を示すための設定なのかなと勝手に解釈しましたが、皆さんは皆さんなりに解釈を楽しみながら観てください。学生達が何を撮ろうとしているのかも含めて想像して楽しんで頂きたいので、タイトルは伏せておきますが、オリジナル作品の知識があまりなければ、彼等が何を撮影しているのか途中まで全然想像がつかず、そこを考えながら観るのがおもしろいとも言えます。わかった時には「なるほど〜」となるか、「え〜!」となるか、楽しみにしてください。
正直なところ、キャラクター達の背景などは深掘りされず、大きなドラマも起こらず、日常を淡々と映している感じなので、知らない間に映画が終わっていたという感覚になる可能性もありますが、もしかしたら「いつも夢を見ているだけのような感覚で毎日をやり過ごしていたら、今という大事な時がどんどん過ぎていってしまいますよ」ということを表現しているのかも知れません。一方で、何でもないような日常で交わされる大学生達の会話の中には、等身大の気持ち、もっと大きな声で周囲に伝えたほうが良い気持ちなどが表れていて、押しつけがましくなることなく、一日いちにちの大切さに気付かされます。そういった意味で、頭で考えながら観るというよりも、感覚的に理解していくタイプの映画として楽しんではいかがでしょうか。
大学生達の会話の中で恋の話が出てくるくらいなので、ロマンチックなムードになることは期待できません。でも逆にそれで気まずくなることがない点では観やすいとも言えます。派手な展開がないので、ちょっと初デートには向いていないように思いますが、映画作りに興味のある学生カップルや、実際に映画作りに携わっているカップルなら、映画作りという視点で観て、会話が弾むところがあると思います。
キッズが観て問題になるという内容ではありませんが、まだピンとこないと思うので、中学生以上になってから観るほうが身近な物語として楽しめるでしょう。ティーンの皆さんは、主人公達と同じ目線で自分達の日常とも重ねながら観られるのではないでしょうか。すごく大きな悩みとなっていなくても、学校生活の中で逃しているチャンスや、やりたいと思っているのに挑戦できていないことがあることに気付かされるかも知れません。自分の中の夢として抱えていることがあるなら、仲の良い友達と一緒に観て、それを機に自分の思いを打ち明けてみると、それが最初の一歩に繋がることもきっとあると思います。
『ビューティフルドリーマー』
2020年11月6日より全国順次公開
エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト
© 2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会
TEXT by Myson