REVIEW
フランスのジャック・シラクは、1995年から2007年まで二期にわたり大統領を務めました。妻のベルナデットは、自身も政治家であり、夫が大統領になれるよう影で支えてきました。にもかかわらず、大統領夫人になっても夫や周囲の人間からぞんざいに扱われ、才能を発揮する場を与えられませんでした。本作は、そんなベルナデットが“反撃”する様子を描いています。
ただし、本作の冒頭ではフィクションであると謳われています。とはいえ、一部は事実に基づいているので、どの部分が事実なのかを知るには、劇中でも出てくるベルナデット・シラクが書いた「私はただあるがままに」を読むとわかるかもしれません。
ベルナデットの反撃と前述しましたが、彼女の反撃はユーモアに溢れています。ベルナデットの人となりが知られる前、彼女は時代遅れで気難しい印象を持たれていたようです。でも、ベルナデット(カトリーヌ・ドヌーヴ)は参謀のベルナール・ニケ(ドゥニ・ポダリデス)の力を借りて、メディア戦略を展開します。ベルナデットがみるみるうちに人気者になる様子は観ていて爽快です。彼女がウィットに富んだ人物であることは、カトリーヌ・ドヌーヴの見事な演技で伝わってきます。本作の公式資料によると、カトリーヌ・ドヌーヴは伝記映画に興味がないものの、本作に出演した理由について、レア・ドムナック監督とクレマンス・ダルジャンの脚本が素晴らしかったからと述べています。
そして、ベルナデットの衣装も見どころの一つです。ベルナデットはカール・ラガーフェルドがデザインした洋服を着ているものの、彼女がイメージ戦略をする前は、“昔の”ラガーフェルドの洋服を着ていたようで、ファッションをいじられる展開も出てきます。大統領夫人とはいえ、ベルナデットは親近感が湧く人物として描かれ、今よりももっと男性社会だった時代に苦労してきた女性が存在感を発揮する姿を映し出している点で、万国共通、年代を問わず、特に女性に共感をもたらすストーリーとなっています。政治家の話とはいえ、とても軽快な内容なので気楽に観られますよ。
デート向き映画判定
亭主関白に悩んでいる方は、間接的な宣戦布告として、夫婦で観てみてはどうでしょうか(笑)。とりあえず本作を一緒に観て、パートナーがどんな反応をするか観察するのもアリでしょう。そんな余裕もないほど限界にきている方は、今後の方針を検討し奮起するきっかけに、一人で本作を観るのも良いと思います。
キッズ&ティーン向き映画判定
今よりもっと男尊女卑が激しい時代に育ったベルナデットとジャックのやり取りは、ある意味反面教師として参考になるかもしれません。また、本作は実在の政治家夫婦にまつわるストーリーとはいえ、コメディとして描かれていて、堅苦しくないので、楽しみながらフランス現代史を学ぶのに良さそうです。とはいえ、フィクションなので、史実は自分で調べてみると一層勉強になります。
『ベルナデット 最強のファーストレディ』
2024年11月8日より全国公開
ファインフィルムズ
公式サイト
© 2023 Karé Productions – France 3 Cinéma – Marvelous Productions – Umedia
TEXT by Myson
関連作
「私はただあるがままに」ベルナデット・シラク 著/扶桑社
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情報は2024年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
- イイ俳優セレクション/カトリーヌ・ドヌーヴ(後日UP)