本作は、アニマルプラネットなどを手掛け、テレビ番組の監督、カメラマン、映画制作者として25年のキャリアを持つジョン・チェスター氏と、料理家である妻のモリー・チェスター氏の夫婦が、あることをきっかけに都会の生活を逃れ、大自然の中に農場を作るというプロジェクトに挑んだ8年間を追ったドキュメンタリーです。ここでタイトルを見て、「農業に特化した話なら私に関係ないや」と思ったとしたら大変もったいない!たしかに農業の話ではありますが、根底にはどんな人にも通じる普遍的なテーマが描かれていて、何かにチャレンジしたことがある人、これから何かチャレンジしたいと思っている人にとっては、響く内容が多く詰まっています。そして、経営者目線でも学べる要素が多々あり、業界や状況は違えど、「こういう時はどう判断するべきか」「どんなスパンで物事を見通すか」など、考え方のヒントがあるのも本作の魅力です。なんといっても、彼らは大自然を相手にしているという点で、人間ではどうしようもない事柄に多くぶつかり、否応なしに究極の選択を何度も突きつけられているわけです。だから、こんなに濃厚で過酷な8年間をやり通した彼らの功績に大きな感動を覚えると同時に、すごく勇気をもらえます。ワイルドな生活はドラマチックだし、映像はとても綺麗だし、エンタテインメント性もふんだんにあるドキュメンタリーです。動物もたくさん出てくるので、子どもから大人まで楽しめますよ。
これは、夫婦の価値観が合っていて、お互いに支え合えていないと実現できない偉業なので、お手本夫婦の姿を見るという意味で、デートで観るのもアリだと思います。かといって、夫婦関係にフォーカスしているわけではなく、自然にお2人の相性が観ていて伝わってくるという感じなので、夫婦、カップルで気まずいことはないでしょう。ただ、大変難しいチャレンジに踏み込んだ例として考えると、今カップルの片方だけが盛り上がっていて、一方が反対している場合だと、一緒にこの作品を観た時に、吉と出るか凶と出るかは未知数です(笑)。
地球のシステム、命のサイクルって、こんな風になっているんだなということが、すごくよくわかる映画です。いろんな動物も出てきて、いろいろな出来事が起きて、とてもドラマチックだし、上映時間も91分という観やすさなので、ぜひキッズやティーンの皆さんにも観て欲しいです。チャレンジするきっかけも、こんなことがあるのかと、全く関係がなさそうなことでも、信じる道に繋がっていくのだなと、将来に可能性と希望を感じてもらえたら嬉しいです。
『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』
2020年3月14日より全国順次公開
シンカ
公式サイト
© 2018 FarmLore Films,LLC
TEXT by Myson