病のために体を自由に動かすことが難しくなりつつある母リリー(スーザン・サランドン)は安楽死を決意し、最後の週末を家族と過ごすために娘達を家に集めます。でも、穏やかに明るく過ごしたいリリーの思いとは裏腹に、その時が近づくにつれて、家族の不安は増すばかり。家族の多くが彼女の決断を1度は支えようとしていましたが、彼女がいなくなるという現実を目の前にして、心の中に溜めていた思いをドッと吐き出します。
家族って、お互いをわかっていると思うからこそ言葉で伝えていないことがたくさんあって、だからこそ伝わっていないし、わかっていると思っていてもわかっていないことがいっぱいありますね。同時にわかってあげようとするから黙っていることもあるし、わかって欲しいのにわかってと言えないこともある。愛に溢れた家族でもこういう複雑さは絶対にあって、本作では最後の週末に皆の思いが一気に吹き出し、お互いを理解していこうとする過程がドラマチックに描かれています。
そして残される側はいつまでも愛する人にそばにいて欲しいから、生きられるだけ長く生きて欲しいと思うけれど、本人からすると尊厳を守りたい思いもあって、両者の気持ちが痛いほど伝わってくるからこそ、観ていて胸が締め付けられます。自分が同じ立場だったらどうするか簡単には決められませんが、ここで描かれる家族の姿にはとても共感でき、最後には温かい気持ちになれます。数日間の家族の姿を描いた物語ですが、とても濃厚で、人の心の動きを丁寧にリアルに描いています。スーザン・サランドンをはじめ、ケイト・ウィンスレット、ミア・ワシコウスカ、サム・ニールといった名優達の共演も見ものです。大人になり独立すると家族と会う機会も少なくなりますが、本作を観て家族の温もりを改めて感じてみてください。
テーマが重いので、初デートやウキウキとラブラブなデートをしたい日には不向きですが、心の距離をもっと縮めたいと思っているカップルは、本作を観てお互いの家族について話すと良いでしょう。複雑な恋愛模様も出てきますが、状況が状況なので、自分達に置きかえて気まずくなるようなことはないでしょう。こういったジャンルは涙を誘う要素が多いので、ハンカチをお忘れなく。
安楽死とは何かを知り、それについて自分なりの価値観を持って観たほうが良いと思うので、中学生くらいになってから観てください。本作には、リリーの孫が出てくるので、ティーンの皆さんは彼の目線が1番身近に感じられると思います。孫と祖母の素敵な関係が描かれているので、おばあちゃんが近くにいる人はぜひ誘ってあげてください。
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』
2021年6月11日より全国公開
PG-12
プレシディオ、彩プロ
公式サイト
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TEXT by Myson