REVIEW
A24スタジオが手掛ける、ジェシー・アイゼンバーグ初監督作と聞いただけで、映画ファンなら観ずにいられませんよね。さらに本作の製作にはエマ・ストーンが名を連ねており、ジュリアン・ムーア、フィン・ウォルフハードが出演するなど、そそるポイントが満載です。公式資料のプロダクションノートには、ジェシー・アイゼンバーグが脚本、監督を務める初長編作品であることの他に、「エマ・ストーン、デイヴ・マッカリーが創立した製作会社フルート・ツリーの初製作作品」と記されていて、本作はジェシー・アイゼンバーグにとっても、エマとデイヴ夫妻にとっても記念すべき作品といえます。『ゾンビランド』で共演して以来の付き合いとなるエマ・ストーンが、「物語にはジェシー本人があちこちに垣間見える」(公式資料)と語るように、ジェシー・アイゼンバーグらしさが漂う世界観は、観れば納得がいくと思います。
本作に登場するカッツ家の母エヴリン(ジュリアン・ムーア)は、DV被害者を支援するシェルターの運営者で、息子のジギー(フィン・ウォルフハード)はネット上で動画配信をし、自作の歌を披露して投げ銭を稼いでいます。2人は異なる立場で”世界を救っている”と自負しているようでいて、どこか空虚さが漂います。ちなみに原題は「When You Finish Saving The World」で、世界を救おうとしている母と息子が、家庭では思いっきりすれ違っている状況にかなりジレンマを感じるストーリーとなっています。本作を観ていると、目の前に先に救うべき状況があるのに、外に目を逸らしている親子の姿に切なくなります。そして、家族って近いからこそややこしい関係であることを改めて客観視できます。キャラクターの複雑な心境を表現するジュリアン・ムーアとフィン・ウォルフハードの演技も絶妙で、観ている側にも、寂しさ、わびしさ、もどかしさ、やるせなさといった似て非なるさまざまな感情が一気にわきおこってきます。特に、エヴリンの狂気に向かいそうな危なっかしい部分を演じるジュリアン・ムーアのさじ加減には圧巻です。
現代社会のある種の病理を描くと同時に、普遍的な家族の物語を合わせて描いた本作。ジェシー・アイゼンバーグの今後の監督作にも期待が膨らみます。
デート向き映画判定
友達以上恋人未満の方は、何か触発される部分がないともいえません。2人のやり取りでちぐはぐなところに目をつむったままデートをしている2人だとしたら、自分達を客観視しているようでちょっと気まずくなる展開があるかもしれません。こういった点で引っかかる部分がないなら、何も気にせず映画を堪能して、鑑賞後に家族の話もすると、お互いをもっと知る機会にできそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定
気持ちがすれ違ったまま、お互いによそを向いてしまっている母と息子の物語です。そして、息子のジギー目線では、恋愛やアイデンティティの話でもあるので、ティーンの皆さんには、感情移入するポイントが多々あると思います。母エヴリンの姿を通して、普段子どもが目にしない母親の別の顔も観られます。普段何気なくとっている態度が積み重なって、親子関係が変わってしまったことに気づく場面もあるでしょう。家族だからこそ素直になるのが難しいこともありますが、本作を観ると、少し心がほどけるのではないでしょうか。
『僕らの世界が交わるまで』
2024年1月19日より全国公開
カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2024年1月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。