REVIEW

僕たちは希望という名の列車に乗った

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』レオナルド・シャイヒャー/トム・グラメンツ/ヨナス・ダスラ―/レナ・クレンク/イザイア・ミカルスキ

舞台はベルリンの壁建設の5年前にあたる1956年、ソ連の影響下に置かれていた旧東ドイツ。ここで高校に通っていた生徒達が実際に起こした出来事を映画化しています。生徒達の一部が、何らかの理由をつけて西ドイツを訪れたり、禁止されている内容のラジオをこっそりと聞いたり、始めのうちは好奇心旺盛な若者達がスリルを味わいたくてやっているだけのようにも見えますが、授業中に起こしたある行動が引き金となり、政治的意味を持つ反逆として、大ごとになっていきます。誰かに責任を負わせないと幕引きができないと考える大人達は、首謀者を差し出すように生徒達に迫り、彼等はそこで友情や政治的姿勢、人としての生き方が問われることになります。高校生にここまでしなければいけないのかと、あまりに抑圧的で不自由な統制に驚くと同時に、これまで社会主義国の実態を描いた作品はいくつかありましたが、社会主義で国を統制するのに必要な方法って、こういうことしかないのかと考えさせられます。扱っている問題は難しいですが、本作は高校生が起こした出来事を軸に描かれているので、ソ連とドイツの関係や西ドイツと東ドイツの違いなど歴史上の社会的背景や、子ども達が急に大人にならざるを得ない状況のなかで成長していく様子、苦しい肉体労働をする以外の未来を作ってあげたいと願う親達の思いが身近なこととして伝わってきます。若い俳優達の名演も見ものですよ。

デート向き映画判定
映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』トム・グラメンツ

友情物語、親子の物語としても観ることができ、ラブストーリーも少し入っていますが、社会派ドラマなのでデート向きという感じではありません。ベルリンの壁、西ドイツ、東ドイツ、社会主義というキーワードが歴史的に示す意味をある程度理解していないとピンとこない部分があるかも知れないので、歴史の勉強が苦手な人を誘う場合は、多少基本的な知識だけは入れてから観たほうが良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』レオナルド・シャイヒャー/トム・グラメンツ/レナ・クレンク

観ているうちにドラマチックな展開に引き込まれますが、実話だとふと思い出すと、本当に過酷な状況だなと実感できると思います。運命は変えられるという考え方もありますが、どの時代にどの国に生まれるのかって、自分達が思っている以上に大きなことで、自由に選択できる時代、国に生まれたことに改めて感謝も感じさせられるストーリーです。皆さんと同じ学生達の物語なので、観て感じ取れることがたくさんあると思います。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』レオナルド・シャイヒャー/トム・グラメンツ/ヨナス・ダスラ―/レナ・クレンク/イザイア・ミカルスキ

『僕たちは希望という名の列車に乗った』
2019年5月17日より全国公開
PG-12
アルバトロス・フィルム、クロックワークス
公式サイト

© Studiocanal GmbH Julia Terjung

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP