ボク=佐藤(森山未來)が主人公の本作は、1995年から2020年という長い年月を映し出していて、25年に渡る年月を森山未來が見事に演じています。ストーリーは現在から過去へ遡るように綴られていて、ボクがどういう経験をして今に至るかが徐々にわかっていく物語となっています。彼の価値観には恋愛経験が大きな影響を与えていて、こんなにも影響を受ける恋愛を経験できたということが幸せに見える反面、そこから動けなくなっている辛い部分の両方に共感できると思います。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』というタイトルからいろいろな想像を膨らませて観られるのも魅力で、観る人によって捉え方はさまざま出てきそうです。あの頃と何も変わっていない、変われていないと思っていても、出会う相手によって今までとは違う一面が出てくるところにも人生の皮肉さがにじみ出ていて、人間という生き物のおもしろさが伝わってきます。“普通”の捉え方も1つのテーマとなっていて、観る側に「“普通”って何だろう」「普通って良いの?悪いの?」と価値観を問うストーリーとも受け取れます。私は一周回って爽やかな映画だなと思いましたが、皆さんはどう思うでしょうか。
とにもかくにも若い頃の恋愛はその後の恋愛や価値観を形作る影響力があるのかもしれないと興味深く観られる内容です。ラブストーリーとしては苦々しい部分が多いので、デートで観ると微妙な空気になる可能性はなきにしもあらずですが、若い頃に出会ってからずっと交際をしているカップルなら逆に自分達の関係が長く続いていることに自信が持てるかもしれません。何が正解かをハッキリ示しているわけではなく、観る側に委ねる内容となっているので、今恋愛でどっちつかずの気持ちになっている方は1人でじっくり観るか、本音を話せる友達と一緒に観て、自分の価値観を問い直すきっかけにするのもアリでしょう。
主人公の一通りの経験からすると、30代、40代の方々が1番ピンとくる内容だと思います。キッズの皆さんにはまだピンとこないかもしれないし、ティーンの皆さんもまだリアルに身近な感覚として観られるかはわかりません。ただ、今恋をしている方は将来をいろいろとシミュレーションすることはできるでしょう。シミュレーションしたからといって、計画通りにいくかはわかりませんが、一旦今の自分の価値観を客観的に見るきっかけにはなりそうです。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』
2021年11月5日より全国公開&Netflixにて配信開始
ビターズ・エンド
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TEXT by Myson