REVIEW
1936年に開催されたベルリンオリンピックのマラソン競技で、“日本”は金メダルと銅メダルを獲得しました。でも真相は、当時日本の統治下にあった韓国の選手、ソン・ギジョン(ハ・ジョンウ)とナム・スンニョン(ペ・ソンウ)が日本名で出場し、手にしたメダルでした。金メダリストのソン・ギジョンは表彰台に上がり日本の国歌が流れるなか、月桂樹で胸元の日本国旗を隠したことで引退させられてしまいます。その後、1945年、日本は第二次世界大戦に敗れ、韓国はアメリカ軍政下に入ります。当時、すっかり自堕落な生活をしていたソンはナムに若い選手を本名でボストンマラソンに出場させてやろうと誘われ、動き出します。でも、彼等にはまだ波乱が待ち受けていました。
前情報を入れずに観て、こんな出来事があったのかと驚かされました。本作では、国を背負ってスポーツに取り組むとはまさにこういうことをいうのだなと感じさせる歴史的出来事が描かれています。太極旗(大韓民国の国旗)ではなく、日の丸(日本の国旗)や星条旗(アメリカの国旗)を付けて走らされる辛さは、物理的な問題に留まらず、アイデンティティの問題であることが本作を観るとよくわかります。前半で描かれる問題が解決されたと思えば、後半では別の問題が立ちはだかり、韓国という国そのものが認められていなかった実状にも衝撃を受けました。たかがマラソン大会ではなく、まさに国の存在を世界に認めさせるための偉業を、政治家ではなくスポーツ選手が成し遂げたという意味で、スポーツが持つ大きな力と意義を感じます。
若手ホープとしてボストンマラソンに出場したソ・ユンボク(イム・シワン)の背景にもすごく心が動かされます。ソン、ナム、ソ達が成し遂げた偉業も奇跡だし、3人の存在そのものが奇跡で3人が出会ったことも奇跡だなと思うと、運命的なものを感じずにはいられません。
デート向き映画判定
ロマンチックなムードは期待できないものの、逆に誰でも共感できる内容で、気まずいシーンもないので、初デートからベテランカップルまでどんなカップルでも観やすいと思います。歴史に詳しくなくても、小学校で習った基本的な世界史が記憶にあればおそらくついていける内容なので、構えずに観てください。
キッズ&ティーン向き映画判定
本作では、1936年から1947年までの韓国と日本、アメリカの関係が出てきます。学校で習った方は改めて復習してから観ると、頭に入りやすいでしょう。逆に本作を観てから歴史を詳しく調べるのも勉強になって一石二鳥です。スポーツと政治は一見別の領域にあるように思えるかもしれませんが、本作を観ると政治が私達の日常に近いものだということがわかると思います。
『ボストン1947』
2024年8月30日より全国公開
ショウゲート
公式サイト
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TEXT by Myson
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