REVIEW

FEAST -狂宴-【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『FEAST -狂宴-』ココ・マーティン/ジャクリン・ホセ/グラディス・レイエス/リト・ラピッド

REVIEW

本作を観た後の印象はもしかしたら真っ二つに分かれるのかもしれません。個人的には、人間が持つ善悪の両面を描きながら、弱者と強者の覆らない社会構造を目に焼き付ける辛辣さのある見事な作品だと感じました。本作で描かれているのは美談ではなく、社会の現実です。
物語は、1つの交通事故から始まります。父と幼い娘が乗る荷台付きのバイクにぶつかったのは、レストランを経営する父と息子。被害者が道路に倒れている姿を見て茫然とする息子と運転を交代した父は、一旦その場から去ることを選択します。その後、加害者の家族と被害者の家族の奇妙な関係へと発展していきます。
まず印象的なのは、事故後のやり取りです。これはフィリピンの文化なのか、凶悪犯罪ではないからか、交通事故が多いといった背景があるからなのか、裁判なども淡々としています。ただ、そうした風潮があるなら、本作で描かれているような加害者と被害者の関係が生まれてもおかしくありません。加害者家族と被害者家族との間には、「あんなことがあったのに?」と思えるような奇妙な親密さができていて、同時に仕事の立場上、仕方がないとはいえ、上下関係ができている点で、社会の縮図を見ているような感覚になります。
加害者家族は罪を償うために被害者家族を助けているように見えて、元々は自分達がまいた種です。彼等の奇妙な生活を眺めていると、社会的弱者である被害者家族の寛容さと同時に、社会的強者である加害者家族の、結局は心から分け与えることはしない深層心理を垣間見ている気がします。そうしたそれぞれの人間性は、一見和やかに見えるラストシーンに象徴されていて、かなり皮肉が効いたストーリーとなっています。私はそんな風に本作を観ましたが、観る方によっては解釈がまったく異なるのかもしれません。ぜひ、周囲で観た方と議論も含めて楽しんでください。

デート向き映画判定

映画『FEAST -狂宴-』ココ・マーティン

デートのムードを盛り上げるようなストーリーではない一方で、観終わった後に議論のし甲斐がある作品です。感想を述べあうと、お互いの物事の捉え方がわかるのではないでしょうか。エンタメ色の強い派手な展開の映画が好きな方を誘うにはあまり向いていないと思いますが、観ながらいろいろ思考を巡らせるのが好きな方を誘うには向いていると思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『FEAST -狂宴-』ココ・マーティン/ジャクリン・ホセ/リト・ラピッド

保身のために過ちを犯す大人達(加害者側)の姿は反面教師として観てください。家族を守ろうとする気持ちがあったとしても、やり方が間違っていることもあります。キャラクターそれぞれの心情を想像しながら観ていると、自分はどういう人間でありたいかといった価値観も少し見えてくるかもしれません。

映画『FEAST -狂宴-』ココ・マーティン/ジャクリン・ホセ/グラディス・レイエス/リト・ラピッド

『FEAST -狂宴-』
2024年3月1日より全国公開
百道浜ピクチャーズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2022 HONG KONG PICTURES HEAVEN CULTURE & MEDIA COMPANY LIMITED. All RIGHTS RESERVED.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『バーラ先生の特別授業』ダヌシュ バーラ先生の特別授業【レビュー】

教育がビジネスの道具にされ、貧富の差がますます広がる1990年代のインドを舞台に、1人の教師が生徒達の未来のために…

映画『エミリア・ペレス』セレーナ・ゴメス セレーナ・ゴメス【ギャラリー/出演作一覧】

1992年7月22日生まれ。アメリカ出身。

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ シンシン/SING SING【レビュー】

エンタテインメントの力は、観る側だけではなく作り手にも発揮される…

映画『アマチュア』来日ジャパンプレミア:ラミ・マレック、レイチェル・ブロズナハン、ジェームズ・ホーズ監督/三宅健(スペシャルゲスト) オスカー俳優ラミ・マレックの役作りとは?『アマチュア』来日ジャパンプレミア

『アマチュア』の日本公開を目前に控え、主人公チャーリー・ヘラーを演じたラミ・マレックと、妻のサラを演じたレイチェル・ブロズナハン、ジェームズ・ホーズ監督が来日…

映画『アマチュア』ラミ・マレック アマチュア【レビュー】

ラミ・マレックが主演と製作を務める本作は、ロバート・リテル著「アマチュア」(「チャーリー・ヘラーの復讐」の改題)を原作とした…

DMM TVオリジナルドラマ『ドンケツ』伊藤英明 DMM TV オリジナルドラマ『ドンケツ』キャスト登壇!完成披露試写会 5組10名様ご招待

DMM TV オリジナルドラマ『ドンケツ』キャスト登壇!完成披露試写会 5組10名様ご招待

映画『Page30』唐田えりか/林田麻里/広山詞葉/MAAKIII Page30【レビュー】

エグセクティブプロデューサーの中村正人(DREAMS COME TRUE)が堤幸彦監督にオファーし始まった本作は…

映画『花まんま』鈴木亮平/有村架純 花まんま【レビュー】

原作の朱川湊人著「花まんま」は、2005年に発表され、第133回直木賞を受賞…

映画『ナミビアの砂漠』中島歩 中島歩【ギャラリー/出演作一覧】

1988年10月7日生まれ。宮城県出身。詳しいプロフィールは→所属事務所公式サイト/『敵』…

映画『ゴーストキラー』髙石あかりさんインタビュー 『ゴーストキラー』髙石あかりさんインタビュー

飛ぶ鳥を落とす勢いで大活躍中の髙石あかりさんにインタビューをさせていただきました。『ゴーストキラー』は、“ベイビーわるきゅーれ”シリーズでタッグを組んできた、園村健介さんが監督を務め、阪元裕吾さんが脚本を担当…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『バーラ先生の特別授業』ダヌシュ
  2. 映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ
  3. 映画『アマチュア』ラミ・マレック
  4. 映画『Page30』唐田えりか/林田麻里/広山詞葉/MAAKIII
  5. 映画『花まんま』鈴木亮平/有村架純

PRESENT

  1. DMM TVオリジナルドラマ『ドンケツ』伊藤英明
  2. 映画『金子差入店』丸山隆平
  3. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
PAGE TOP