REVIEW

ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

REVIEW

政治的手腕を発揮しながらも、暴君としてイギリス史に悪名を刻んだヘンリー8世には、6人の妻がいました。最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンは離婚、2人目の妻アン・ブーリンは斬首、3人目の妻ジェーン・シーモアは死亡、4人目の妻アン・オブ・クリーヴズは離婚、5人目の妻キャサリン・ハワードは斬首という運命を辿るなか、本作の主人公キャサリン・パーは妻という立場のまま生存した唯一の人物となります。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル

ヘンリー8世はもとより、アン・ブーリンやメアリー1世、エリザベス1世の物語は映画化されているので記憶にある方もいらっしゃると思います。一方、キャサリン・パーに関してはこれまであまり語られてこなかったという点でも興味をそそります。本作は、プロデューサーのガブリエル・タナが、原作のエリザベス・フリーマントル著“Queen’s Gambit (The Tudor Trilogy)”を出版前に読む機会を得て、キャサリン・パーの現代性に惹かれ、映画化を進めたといいます(映画公式資料)。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

本作の冒頭では、アリシア・ヴィキャンデルが演じるキャサリン・パーが、アン・ブーリンの娘エリザベス(のちのエリザベス1世)や、ジェーン・シーモアの息子エドワード(のちのエドワード6世)らを我が子のように扱う様子が描かれ、彼女の寛大な人間性がうかがえます。また、エリザベスに読み書きを学ばせる様子からは、聡明さと先見の明が感じられます。そして、夫ヘンリー8世(ジュード・ロウ)を恐れながらも、自分の意思を静かに貫き通した姿は、信仰心の深さと度胸の強さを表しており、彼女に共感を覚えます。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』ジュード・ロウ

ジュード・ロウが演じるヘンリー8世は迫力満点であると同時に、暴君といえどもカリスマ性があり、政治的手腕を発揮した人物としての説得力を感じます。エディ・マーサンとサム・ライリーが演じるシーモア兄弟もキャサリン・パーの運命を握る人物として印象に残ります。他にも、最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンの娘メアリー(後のメアリー1世)など、ヘンリー8世の後のイギリス史に名を残す人物が一同に登場する点でとても見応えのある物語となっています。

デート向き映画判定

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル

女性の存在意義が跡継ぎを生むことにしかなかった時代に、賢く強く生きたキャサリン・パーは希有な存在です。そして、彼女を支えた侍女達や、彼女が秘かに助けていた幼馴染みの女性の強さも印象に残ります。自分の意思を捨てずに生きた彼女達にどんな印象を抱くかによって、性役割に対する考え方が表れそうです。交際をする上では大切なポイントなので、相手の考え方を知りたい場合は、敢えて一緒に観るのも1つの手かもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

世界史の授業でお馴染みの人物が複数登場する点で勉強にもなるので、15歳になったら観てみてください。映画として脚色されているという点は念頭に置きつつ、世界史の人物相関図を頭に入れながら観ると、イギリス史の点と点が線で繋がるでしょう。王族ゆえの複雑な人間関係や、時代や立場ゆえに生き方を縛られたキャサリン・パーの生き様を観ると、自由な思想を持てる現代に生きる私達がいかに恵まれているか実感が湧くと思います。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』
2025年2月14日より全国公開
R-15+
ロングライド
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© Brouhaha Entertainment Limited 2023

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨 #真相をお話しします【レビュー】

予想外の展開がいくつもテンポ良く出てくるので、約2時間の…

映画『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』タリア・ライダー JOIKA 美と狂気のバレリーナ【レビュー】

2012年、バレリーナのジョイ・ウーマックはアメリカ人女性で初めてボリショイ・バレエ団と…

映画『愛を耕すひと』アマンダ・コリン アマンダ・コリン【ギャラリー/出演作一覧】

1986年3月4日生まれ。デンマーク、ラングステッド出身。

映画『異端者の家』ヒュー・グラント/ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト 異端者の家【レビュー】

タブーにかなり踏み込んでいる印象で、とても驚きました。宗派を問わずキリスト教徒が…

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『けものがいる』レア・セドゥ けものがいる【レビュー】

毎度ながら前情報を入れずに観て、最初のシーンで「?」、次のシーンでも「?」となりながら、徐々に…

映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』ケイト・ウィンスレット 『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』プレミアム先行試写会 10名様ご招待

映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』プレミアム先行試写会 10名様ご招待

映画『けものがいる』レア・セドゥ 『けものがいる』鑑賞券(ムビチケ) 3組6名様ご招待

映画『けものがいる』鑑賞券(ムビチケ) 3組6名様ご招待

生き別れた兄弟のような関係、ニコラス・ウィンディング・レフン、小島秀夫がプラダ青山店にて展覧会【SATELLITES】を開催!

ニコラス・ウィンディング・レフンと小島秀夫による展覧会【SATELLITES】が、プラダ青山店にて2025年4月18日から8月25日まで開催されます。開催を記念して、ニコラス・ウィンディング・レフンと小島秀夫がトークイベントを行いました…

映画『マインクラフト/ザ・ムービー』ジェイソン・モモア/エマ・マイヤーズ/ダニエル・ブルックス/セバスチャン・ハンセン マインクラフト/ザ・ムービー【レビュー】

「2009年に誕生し、2011年に正式発売されて以来、瞬く間に世界を席巻」している大人気ゲーム“マインクラフト”(通称:マイクラ)が…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨
  2. 映画『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』タリア・ライダー
  3. 映画『異端者の家』ヒュー・グラント/ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト
  4. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  5. 映画『マインクラフト/ザ・ムービー』ジェイソン・モモア/エマ・マイヤーズ/ダニエル・ブルックス/セバスチャン・ハンセン

PRESENT

  1. 映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』ケイト・ウィンスレット
  2. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  3. DMM TVオリジナルドラマ『ドンケツ』伊藤英明