1960年代半ば、アメリカ最大の自動車メーカー、フォードモーター社から、とんでもない仕事を請け負った2人の男、キャロル・シェルビーとケン・マイルズの実話を映画化。マット・デイモンが元レーサーでカー・デザイナーのキャロル、クリスチャン・ベイルが型破りな天才ドライバー、ケンを演じています。当時フォードモーター社は悪化していた業績を巻き返そうと、新しい戦略としてフェラーリを買収し、スポーツカーの分野に進出しようと試みます。でもその買収が破談になり、フォードはキャロルに、ル・マン24時間レースでフェラーリに勝てる車を作るよう依頼。キャロルがケンをメンバーに加え、“打倒フェラーリ”を掲げて、勝つために奔走するというお話です。でも、実は『フォードvsフェラーリ』というタイトルのまんまで終わらないのが、本作の一番の見どころ。キャロルとケンが戦う相手はフェラーリだけではなく、あらゆる局面でフォードという大きな組織とも戦わなければいけなくなります。それは下請け業者vs大手企業という構図でもあるところで、よりドラマチックでエモーショナルなストーリーになっていて、一筋縄ではいかない人生の機微をリアルに描いています。マット・デイモン、クリスチャン・ベイルの演技も本当に素晴らしく、名シーンがいくつもありますが、ケンの息子役を演じるノア・ジュプも2人の名優に負けない本当に良い芝居をしています。勝負の世界を描いてはいますが、その次元を超えた美しいものを見せてくれる秀作です。
シーンとしては限られていますが、ケンと彼の奥さんとの関係も印象的に描かれています。夢を追う人と付き合っている人は、お互いを客観視できる部分があるので、一緒に観て、本音をぶつけ合うきっかけにできるでしょう。老若男女問わず、心に響く人間ドラマなので、デートでもぜひ観てください。涙が出ちゃう可能性のあるシーンがあるので、女子はメイク直しとハンカチをお忘れなく。
153分と上映時間は長めですが、あっという間に感じるくらいテンポも良く、内容が詰まった作品です。ノア・ジュプが演じるケンの息子の目線も丁寧に描かれていて、親子の物語としても楽しめます。お父さんのことが大好きで、お父さんの仕事も大好きで、でもとても心配で…。そんな愛情がいっぱい詰まった作品です。家族で観るのもオススメですよ。
『フォードvsフェラーリ』
2020年1月10日より全国公開
ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト
TEXT by Myson
©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation