東日本大震災から9年経ちましたが、福島第一原発の事故の裏側を、これだけ赤裸々に語ってくれたことに感謝です。目の前で非常事態が起き、逃げるという選択肢が最初からないなかで、自分達がやらなければという使命感を持って命をかけて対応にあたってくれた電力会社の現場の方々の姿は涙なしには観られません。この期に及んで要領を得ない政府や大企業幹部達の対応は観ていて本当に腹が立ちますが、現場の方々の知識と行動力、そして献身的な姿勢と責任感によって、どれだけ救われたかがわかります。東日本全体が壊滅していたかも知れなかった状況が今さらながらとてもリアルに伝わってきて、私達の命がまだあるのは彼らのおかげだなと感謝してもしきれません。当時から今も福島から避難した方々に心ない言葉を吐いたり、学校ではいじめがあったりすると聞きますが、そんな無理解な人にこそこの映画をぜひ観て欲しい!改めてこのことは忘れてはいけないし、今新型コロナウィルスの問題が起こっていますが、まさに同じような状況が背景であるのかと思うと、日本の危機管理の体制を見直す意味でも、政府関係者や保身ばかり気にして適切な対応を止めてしまっている関係者上層部の方々にもぜひ観て欲しいです。
福島第一原発に働く夫と、その家族の物語も描かれています。災害で家族は避難しつつ、夫の命もどうなるのかわからず、ただ連絡を待っているだけの状況な上に、原発が爆発したことで、周囲からもどんな目を向けられるかわからないなかで、夫婦の信頼関係の重要さが伝わってきます。ロマンチックなムードにはなりませんが、大切な人を思う気持ちは改めて実感できるはず。涙もろい人はハンカチと、女子はメイク直しグッズをお忘れなく。
いつも当たり前に仕事から帰ってくるはずのお父さんが、帰ってくるのかわからない…。本作には子どもが心配する目線も描かれているので、年齢を問わず感情移入できます。原発の仕組みがわからなくても、どれくらい大変なことが起きていて、どれくらい危険な状況で人が対応しているのかは、映像から伝わってくるので、小学生が観ても理解できると思います。本作を観て、私達の見えないところで、命がけで私達を守ってくれた人達がいることを、ぜひキッズやティーンの皆さんにも知って欲しいです。
『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』
2020年3月6日より全国公開
松竹、KADOKAWA
公式サイト
© 2020『Fukushima 50』製作委員会
TEXT by Myson