すごく素敵な作品です!本作は、超エリート校で成績不振に悩む17歳のジウ(キム・ドンフィ)と、同じ高校で夜間警備員として働き、生徒達から“人民軍”というあだ名で呼ばれる男(チェ・ミンシク)が、ひょんなことから出会い、運命を変えていく物語です。既にあらすじをご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、毎度ながら私は「映画は前情報を入れずに観るのが1番おもしろい」というスタンスなので、今何も知らない方のために敢えてチェ・ミンシクが演じる役柄についてはこれ以上書かないでおきます。
本作はまずキャラクター設定が上手です。特にチェ・ミンシクが演じる役柄の背景には、物語を一層ドラマチックにする要素が複数あります。だから、キャラクター同士の化学反応がいろいろなところで起きます。また、音楽に絡めた展開もとてもユニークで、観ているこちらもキャラクター達と同じく心が躍ります。あるキャラクターが持っている深い数学愛をこんな風に表現するとは見事です。そして、本作には金言がたくさん散りばめられています。だから何度でも観たくなりますよ。あと、やっぱりチェ・ミンシクの演技が素晴らしい!彼の演技に信憑性があるおかげでどっぷりこの物語に没入できます。
数学者が主人公ということで、ジャンルは問わず、学者や研究者はどストレートにハマる作品だと思います。僭越ながら私も今社会人大学院生で研究をしている身なので、余計に心に刺さりました。もちろん、学者、研究者でない方でも、人生で役に立つ気付きをもらえる作品となっています。年の離れたジウと“人民軍”との交流に人の温かさが感じられて、ウルウルポイントも複数あります。元気と勇気をもらえる作品なので、皆さんにも自身をもってオススメしたいと思います。
切ない展開はありつつも、気まずいシーンはなく、心温まるお話なので、初デートでも安心して観られます。大人なら思春期を振り返るきっかけになるので、鑑賞後は昔話に華が咲くでしょう。ジウと同じ世代のカップルなら、学校で悩んでいることなどを相談するきっかけにもできそうです。観終えた時には爽やかな気持ちになるので、学業や仕事に疲れている時に観ると一緒にリフレッシュできますよ。
ティーンの皆さんはジウの姿に自分を重ねながら、等身大で観られると思います。今まさに進路に悩んでいる方や、挫折しそうな状況に悩んでいる方は、本作を観ると勇気が湧いてくるかもしれません。そして、頭が固くなっていたら、少し柔らかくできるヒントをもらえるでしょう。こんな出会いは現実的にはなかなかないとは思いますが、年齢や立場を越えた人間関係も、とても貴重な財産になることがわかるでしょう。
『不思議の国の数学者』
2023年4月28日より全国公開
クロックワークス
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TEXT by Myson