好きなことを仕事にする難しさと楽しさ、有り難さをとても爽快に描いた作品です。本作を観ると、アニメを作るというクリエイティブな仕事は正解がないからこそ制作に携わる人達の価値観やこだわりがぶつかり合い、それをまとめていくのは至難の業だとわかります。そして、良いものを作りたいという情熱だけで突っ走ってもダメで、どこまで突き詰めるべきかもわかりません。本作の主人公、斎藤瞳(吉岡里帆)は若くして話題作の監督に大抜擢されるものの、自分の思い入ればかりが先走って、なかなかスタッフやキャストをまとめられません。また、制作に専念したいのに宣伝活動に駆り出されるばかりで納得がいかないことを多く感じています。そんな彼女がどんな風に作品を完成させるのかは本編を観ていただくとして、彼女が抱く感情は職種や状況は違えど、誰もが感じたことがあるものだと思います。
仕事に対する思い入れが強ければ強いほど、現実と理想のギャップにがっかりすることは誰にでもあるはずです。でも、自分に見えている景色の奥にまだ見えていないことがあるかもしれません。思い通りにいかない、皆が協力してくれないと嘆く前に、自分の視野を広げてみると、ガラッと景色が変わる可能性を本作は教えてくれます。観終わった後は、「これだから、好きなことを仕事にするのはおもしろい!」と思えます。お仕事映画としてすごく共感でき、励まされる作品となっています。やりたい仕事があり、これから就職をしようとする方は事前の社会見学として観るのもオススメ。既に今壁にぶつかっている方も思考を切り替えるきっかけに観てみてはどうでしょうか。
ロマンチックなムードになるタイプの作品ではありませんが、仕事で悩みを抱えていたり、ただただ悩殺されてコミュニケーションが不足しているカップルは、本作を一緒に観ると、ふっと一息入れられるかもしれません。忙しすぎて見えていなかったことに目がいくことで、リフレッシュできる要素もあるので、2人で気分転換してください。
アニメを作る業界やエンタテインメント業界はきらびやかに見えますが、本作ではその裏で多くの人々が大変な状況を乗り越え、作品を作り上げていく様子が描かれています。どんなお仕事にもいえますが、外から見えることは限られていて、多くのことは実際にやってみなければわかりません。これから進路を考える皆さんにとって、なりたい職業が何かにかかわらず、とても参考になるでしょう。
『ハケンアニメ!』
2022年5月20日より全国公開
東映
公式サイト
© 2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
TEXT by Myson