主人公のエリーはアメリカの田舎町に住む中国人で、母を早くに亡くし、父と2人で暮らしています。エリーは成績優秀で、影で学校の提出物の代筆業をやっていますが、友達はおらずいつも独りぼっち。そんな彼女に、アメフト部のポールが、アスターという人気女子へのラブレターの代筆を頼みます。そこからエリー、ポール、アスターの奇妙な関係が出来上がっていくのですが、ラブストーリーというよりは、友情の物語であり、将来や恋愛関係に悩む高校生の等身大の青春物語で、とても親近感が湧く物語になっています。1人を好み同級生との接触をなるべく避けているように見えるエリーが、天真爛漫なポールの優しさに触れて変化していくところや、学校では人気者のアスターが実は自分の本当の居場所をまだ見つけられていないところ、そして自分の目標にまっしぐらだったポールがエリーとの交流の中で人間の多様性に気付いていくところなど、誰もが何かしら共感できる要素があり、淡々と物語が進んでいきつつも見入ってしまうでしょう。さらに哲学的な言葉がいくつも語られていくので、テーマの深さも感じます。とても可愛らしい、ほっこりしたストーリーで、ウルッとしてしまうシーンもあり、観ると温かい気持ちになれますよ。
世の中的なものさしで良いとされる相手を選んでしまっていながら、心の奥底で「この人で良いのか?」と薄々気付いている人は、何かしらの刺激を受ける可能性があるので、1人でじっくり観るほうが良いかも知れません。そんな心配がないカップルは、気楽に観てください。
友達の恋愛を手助けしているうちに、自分の中の複雑な気持ちに気付いてしまう…なんて展開は、学生にはよくあること。好きな人との関係も大事だけど、友達との関係も大事だから、どうしたら良いかわからなくなると思いますが、本当の友情が築けていたらきっと大丈夫ということを、本作は教えてくれます。そして、皆さんの世代独特の孤独感など、ドンピシャで共感できるストーリーとなっているので、ぜひ観てみてください。
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
2020年5月1日よりNetflixにて配信
公式サイト
TEXT by Myson