経営難に陥った歴史ある映画館が舞台とあって、映画館の再起をはかる物語かと思いきや、それだけに留まらず、そこに関わる人達の背景や彼等が映画とどんな繋がりを持っているのかが描かれていて、映画ファンにとってとても身近なストーリーと言えます。また、茂木莉子(高畑充希)と田中茉莉子(大久保佳代子)の関係を描いたストーリーには、女性として、人として共感できるところもあり、どんな道を歩んできたとしてもそれはそれで良いと思わせてくれます。個人的には、田中茉莉子のキャラクターは、良い意味で大久保佳代子らしいユーモアもあり、親近感が持てました。
夢物語のような派手な再生物語ではない点でも現実味があり、今コロナ禍で行き詰まっているなかで観ると、自分達を客観視できるところもあります。人情溢れる物語なので、人とのコミュニケーションに飢えている人は本作を観てホッコリしてください。
男運が悪いキャラクターが出てくるので、男運、女運が悪いと身に覚えがある方は1人でじっくり観たほうが、いろいろと客観的に冷静に考えられるかもしれません。平和に交際中のカップルにとっては、気まずいシーンはないので安心して観てください。名画座にも行ってみたくなったり、昔の名作にも興味が湧いたら、それも2人で楽しめると良いですね。
先生と生徒のストーリーもあり、キッズやティーンの皆さんにも身近に感じられるところがあります。子どもの頃、若い頃に良い大人に出会うことはとても重要です。それを皆さん側から見極めることは難しいと思いますが、真剣に自分のことを思ってくれていると感じられる大人が身の回りに見つかったら、その人の言葉を大事に覚えておいて欲しいと思います。劇中では大久保佳代子が個性的な先生を演じているので、ぜひ注目して観てください。
『浜の朝日の嘘つきどもと』
2021年8月27日より福島県先行公開/9月10日より全国公開
ポニーキャニオン
公式サイト
© 2021 映画『浜の朝日の嘘つきどもと』製作委員会
TEXT by Myson