REVIEW
「花」はキャラクターの心を指していたり、恋愛や追い求めていた夢を指していたり、観る人によってさまざまな解釈ができるでしょう。どこで枯れてしまったのかと考えながら観られると同時に、何かが枯れることで、他に芽生えるものがあることにも気づかされます。ただ、人は必ず誰かと関わって生きているからこそ、せっかく芽生えたつぼみでもタイミングが合わない場合もある点が人生の空しさ、苦さに思えます。
また、キャラクター達が、衰退しつつあるピンク映画に携わる仕事をしている設定が、本作のテーマの1つとなっている性にまつわる話を展開する上で効いています。人間の性欲の変化と世の中のニーズの変化を実感するセリフも印象的です。カオスな描写の中に哲学的メッセージも感じます。設定上、濡れ場は多くあり、衝撃的なシーンもありつつ、最初は驚きつつもあまりのバカバカしさに笑えてくるシーンもあります。ただ、可笑しなシーンがあることで、キャラクター達の重く切ない後悔の念が余計に引き立ちます。
冒頭では謎が多いなか、伏線が徐々に回収されていきます。人間ってやっぱり不思議な生き物だなと思うと同時に、少し愛おしく感じられるストーリーです。俳優達の体当たりの演技も見応えありです。
いろいろな意味でデートには不向きでしょう。過激な性描写もあり、友達と観るのも何だか気まずい気がします。
内容としては、とんでもない恋愛をしてからなかなか立ち直れないでいる方に特に響くのではないでしょうか。一見理解し難い感情の裏に、こんな思いもあるのかもしれないと気づける部分があります。人の恋愛を客観的に見ることで、少し視野が広がって、自分のモヤモヤした気持ちに一区切りつけられるのではないでしょうか。
18歳になっていれば観られるとはいえ、まだ恋愛未経験の方には刺激が強いかもしれません。ただ、かなり苦い恋愛経験が描かれているので、反面教師的に勉強になる部分はあります。何度か恋愛をしてから観ると、よりいろいろな視点で楽しめると思います。
『花腐し』
2023年11月10日より全国公開
R-18+
東映ビデオ
公式サイト
©2023「花腐し」製作委員会
TEXT by Myson
関連作
書籍「花腐し」松浦寿輝著/講談社文庫
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情報は2023年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。