本作は、『超擬態人間』の藤井秀剛が、“生きにくい社会に対する怒り”をテーマに描いた青春クライムサスペンスです。物語は、夢に向かって邁進しながらも苦悩を抱えている演劇役者達が劇場を占拠し、200名もの観客を人質にとるところから展開していきます。最初はどうしてこんなことが起きているのか明かされていませんが、物語が進むにつれて彼らの身に起きた出来事が少しずつ明かされていきます。社会に対する不満という点では、共感できる部分もありますが、そこから主人公達の行動がエスカレートしていく様子にはとてもハラハラさせられます。
また、劇場内で起きていることが公演の演出なのか現実なのか混乱させられる点もとても秀逸で、人質にとられた人達と同じ視点でリアルな緊張感を味わうことができます。本作に出演した越智貴広、工藤トシキをはじめとしたキャスト陣は、オーディションにより出演が決まったそうですが、そんな彼らの熱い演技にも注目です。主人公達の過激な行動が映し出され、まさに半狂乱なシーンも続きますが、彼らがここまで追い込まれた原因は何なのか、そして占拠されてしまった劇場がどんな結末を迎えるのか最後までご覧ください。
激しい描写もあり、相手によっては気まずくなる可能性もあるので、できれば1人で心置きなく観て欲しいと思います。主人公達の心情に注目することで、現代を生きる自分の社会的な立場や状況についても考えるきっかけになりそうです。
R-15+なので、キッズは15歳以上になってから観てください。ティーンが観る場合も、前情報なしでは激しい描写に驚くと思うので、ネタバレにならない程度にどんな内容の作品か知った上で観ることをオススメします。主人公達の過激な行動は決して肯定できるものではありませんが、社会に対して不満や怒りを抱えた時にどんな行動をすべきか、皆さんもこれを機に考えてみて欲しいと思います。
『半狂乱』
2021年11月12日より全国公開
R-15+
POP
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TEXT by Shamy